続・付き人奮闘記 94 | chihiroの気まぐれブログ・これからも嵐と共に

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2021年1月。嵐さんの休業を機に、妄想小説を書き始めました。
主役は智くんで、メンバーも誰かしら登場します。ラブ系は苦手なので書けませんが、興味のある方はお立ち寄りください。

 

 

 

歌の話は一旦置いておいて、本来の目的に入る。

 

 

「実は10月から始まる朝のバラエティーの曜日レギュラーに決まった」

 

最近のバラエティーは曜日レギュラーとか数か月間限定のレギュラーとかがある。

曜日レギュラーは決まった曜日に毎週出演するもの。

隼人が謹慎前までやっていたものも曜日レギュラーだ。

 

「そういうことは生放送ですか?俺達も毎週生で出られるんですか?」

 

さすがの風磨もいきなり生だとは思っていなかったのか少し驚いている。

 

「そうだ。生放送だよ。その中で3人には一つのコーナーを受け持って貰う」

 

 

潤が話した3人が受け持つコーナーと言うのは、一人ずつ拘りの商品を紹介するもの。

自分が好きな物でも良いし、使ったことはないけど興味があるものでも良い。

食品でも雑貨でも何でもOK。それを実際に探しにロケに行って、

それをスタジオで紹介するというもの。

 

商品のチョイスは一人ずつだけど、実際に3人でロケに出て3人でスタジオで紹介する。

 

「目新しい企画ではないけど、アラサーの男子が今何に興味を持っているのか、

 この時間帯の視聴者層は年配の人が多いから、自分の子供の好みと合わせて

 見て貰えると面白いと思う」

 

「番組の中の一つのコーナーだけど大事だよ」

 

「でも拘りのある物と言っても、俺そんなにないよ」

 

隼人が不安そうに口にする。

 

「好きな物とか興味のある物とかでも良いんだよ。

 自分でわからなければ両親の好きそうな物でも良いし、それに隼人は結構拘りはあるよ。

 だから隼人に関しては俺がある程度ヒントは出せるし、他の二人についてもこの数日間で

 可なりわかってきたから俺も協力出来るよ」

 

「頑張ろう。せっかく3人でやれるんだから、歌手デビューが後になったとしても、

 これで少しでも3人を知って貰えれば良いね」

 

「ロケの収録もあるから結構大変だろうけど、俺達3人共バラエティーの経験はあるし、

 何でもやってみるのが大事だからね」

 

それぞれ意欲的な意見が聞かれる中で隼人だけが少し消極的だ。

 

「隼人、どうした?」

 

「これは決まった事なの?」

 

「そうだね」

 

「どうしてオファーの時点で教えてくれなかったの?

 いきなり言われたって困る」

 

「話があったのは3か月くらい前だけど、正式にどんなコーナーになるか聞いていなかった。

 それでもまだ3ヵ月はある。そんなに急な話ではないと思うけどな」

 

「そうじゃなくて決定する前に知らせて欲しかったの。

 俺ももう30だよ。自分の仕事は自分で決めたい」

 

「隼人」

 

「いい加減にしろよ。自分の立場を考えろ。復帰明けの時期にレギュラーなんて贅沢だよ」

 

「だって自分の仕事だよ。自分で決めたいじゃん」

 

「それは理想。もっとベテランになってからの話」

 

「風磨たちの事は知らないけど、うちはずっとそう言うやり方だったんだよ」

 

「そうなんですか?」

 

風磨が俺に聞く。

 

「プロジェクトではだいたいそうだった。と言うのも伸び悩んでいる子や解雇寸前の子を

 引き取って再デビューを目指すのがプロジェクトの目的だったから、

 なるべくやりたいもの、やれるものをやらせるようにはしていた。

 だからオファーが来たものは殆ど全て話してた。

 最もそれが全部通っていた訳ではないけどね」

 

だけどその頃に来ていた仕事とは比べ物にならないんだけど隼人はわかっているのかな。

 

 

俺の言葉に風磨も黙り込んでしまった。

でも今回隼人が拒否しているのはそれだけが理由ではない。

最初、3人で仕事が出来ると俺が言った時はそんな反応は示さなかった。

だけど潤から詳しい内容を聞いて表情が変わった。

だとしたら、理由はこれしかない。

 

「でも、その事は今回は大して関係ないよね。

 隼人がイチャモンを付ける理由が他にあるんだよね」

 

そう言うと思わず隼人が下を向いた。

触れられたくないことだろうけど言わないとわからないよ。

 

「それは何ですか?」

 

「隼人話して良いよね。これから仲間になるんだから知っておいてもらった方が

 助けて貰えるよ」

 

隼人が微かに頷いたので俺から二人に話す。

 

「隼人はロケが嫌いなんだ。ドラマのロケなら大丈夫だけど、いきなりお店に飛び込んで

 ロケをするとか言うのがダメなんだ。元々若い頃のトラウマで人間嫌いな所がある。

 それはだいぶ克服したんだ。だからこそ、こうやって仕事も出来てる。

 だけど同じ業界の人ならいいけど、一般の人と話すのは今でも苦手」

 

 

「確かデビュー当時にマネージャーが立て続けに変わって、

 その一人が威圧的な人で怖くなったのが人間嫌いになった原因だって言ってたよね」

 

樹が漸く口を開く。

 

「知ってたの?」

 

「隼人から聞いた事はあります。

 俺も人見知りだから、人間嫌いではないけど気持ちはわかります」

 

 

「ロケが苦手なら俺達でフォローすれば良い。

 例えばお店の外で待って貰ってても良いし、最初は二人だけでロケに行っても良い。

 それより隼人はこの仕事をやりたいの?やりたくないの?俺はそっちの方が大事」

 

風磨が隼人の目を見ながら聞く。

 

「やりたい。3人で一緒にやりたい」

 

「じゃあ、決まりだね」

 

樹が笑顔で隼人を見る。

 

隼人が俺を見て泣きそうになっている。

 

良かったね、隼人。