顔の見えない友達 23 | chihiroの気まぐれブログ・これからも嵐と共に

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2021年1月。嵐さんの休業を機に、妄想小説を書き始めました。
主役は智くんで、メンバーも誰かしら登場します。ラブ系は苦手なので書けませんが、興味のある方はお立ち寄りください。

 

 

 

俺の話を黙って聞いていた潤が俺に確かめるように聞く。

 

「本当に信用して良いんだよね」

 

「じいちゃんのこと?」

 

「今まで母さんからも聞いた事がなかったし、難しい人と言う印象しか俺にはない。

 カズを安心して預けられる人なんだよね」

 

「難しい人と言うのも他人から聞かされた印象だよね、一度も会った事もないんだから。

 だから一度会って決めてくれれば良いから。俺にしてもどうしてもここでなければ

 ダメだと言う事はないから」

 

「一番はカズだからね。カズが居心地が悪そうだったら連れて帰るよ」

 

「わかった。良いよそれで」

 

 

いくら血の繋がりのある祖父だとは言っても、会った事のない人をいきなり信じるのも

無理なのはよくわかっている。

 

 

「じゃあ、とりあえず二宮のじいちゃんの家に向かおう。

 実は東京から割と近いんだ。大野のじいちゃんの家を想像していると驚くかも…」

 

櫻井病院の最寄りの駅から東京駅とは逆の方面の電車に乗る。

不安そうなカズを潤がしっかりと手を繋いでいる。

 

 

俺が二宮のじいちゃんを頼ろうと思った理由は他にもある。

潤には俺達だけでカズの面倒を見よう、カズの話を聞いてあげれば良いと言っていたけど、

俺も病院のボランティアをしていたから、そんなに単純ではないことはわかっていた。

 

だけどどうしてかあの病院にはカズを置いておきたくなかった。

 

それをじいちゃんに相談したら、

「症状にもよるけど入院は余程の事がない限りしない筈だ。

 恐らく家が遠かったのと見ているのが子供だけと言うのが心配だったんだろうな。

 こっちにも入院設備のない神経科もある。とりあえずは来て見ないか」と言われた。

 

「一時的に記憶がなくても生活が出来るのだから、暫くみんなで一緒に暮らせば良い」と、

言ってくれた。

 

俺はそのじいちゃんの言葉に賭けた。

問題は二人がじいちゃんとの生活に馴染んでくれるかだけど、

もしダメなら別の方法を考える。

 

 

いくつか電車を乗り換えて、少しずつ景色が変わっていくのをカズが興味深そうに見ている。

 

「ここにあこちゃんいるの?」

 

「あこちゃんはいないけど、別の人に会わせてあげるよ」

 

そうして漸く着いた。

東京から在来線だけでも1時間はかかる。

 

都会でもないけど田舎でもない。

 

駅ビルもあるし、駅前にはお店もたくさんある。

 

そこからバスでじいちゃんの家を目指す。

 

「タクシーで来い」と言ってくれたけど、俺は二人にとっては初めてのこの土地をじっくりと

味わってほしかった。だからバスにした。

 

バスに乗って商店街を抜けて15分くらい走ると、既にじいちゃんの家は見えている。

でも、多分潤もそこだとは思わないだろう。

大野のじいちゃんの家は田舎の普通の木造の家だからそれを想像しているかもしれない。

 

 

じいちゃんの家を少し行き過ぎた所にバス停がある。

 

バスの中からじいちゃんが門の前で待っているのが見えた。

 

 

「さあ、降りるよ」

 

二人に声をかけてバスを降りる。

 

バスを降りた二人が珍しそうに周りを見わたしていた。