2040年12月31日。
年明けで59歳になる俺にとっては、
なんとも無謀ともいえる挑戦をやる。
「嵐」の本当の最後のライブ。
その演出で名プロデューサー・松本潤は、
あろうことかフライングをやる決断をした。
こいつは鬼か?
イヤ、嵐のライブの為なら鬼にでも何にでもなるだろうなぁ。
嵐が復活してからもライブは定期的にやっていた。
演出の松本に加え、振り付けは殆どを、こちらも名振付師・大野智が担当。
この二人がタッグを組んだ嵐のライブは最強だと俺は思っている。
だけど、フライングなんて何年ぶりだ?
打ち合わせ中に手汗をかくと言うのを久しぶりに経験した。
ここ数年のライブではそんなこともなかったからなぁ。
だけど、これが嵐なんだよな。
常に新しいことに挑戦してきた。
それは復帰してからも変わらなかった。
この年でライブをしてきたこと自体が挑戦でもあった。
その最後の挑戦がフライングなら、やってやろう。やるしかない。
それに中学生の時からずっと背中を追い続けてきた、
憧れの先輩であり、戦友であり、親友でもある大野智の最後のステージの為なら、
俺は何でもやるよ。
20年前の休業前最後のライブの日も、
そして、本当のラストになる今日も何も変わらず、
少し猫背で、この年になっても少々の白髪があるくらいで、
ふさふさの髪の毛に変わらずに寝癖をつけて、
少し眠そうに部屋に入ってきた。
「智くん、おはよう!」
俺も変わらずに笑って声をかけた。