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2025年8月28日 CNN.co.jp

 

ニューデリー(CNN) ヒマンシ・バルマさんは7年間にわたり、野良犬たちにえさを与えてきた。自宅の階段の下で生まれた子犬を引き取ったことをきっかけに、バルマさんは身寄りのない犬たちと暗黙の約束を交わしたのだ。 

 

ニューデリーのインド門付近にたたずむ野良犬=2024年11月(Arun Sankar/AFP/Getty Images via CNN Newsource)

 

【画像】動物保護施設に収容されている野良犬たち 

 

バルマさんは貯金を切り崩し、500匹あまりの不妊手術費を負担し、さらに数百匹に里親を見つけた。「インディーズ」との愛称で呼ばれるインドの野良犬の群れが近くの草むらで遊ぶかたわらで「数えきれないし、終わりもない」とバルマさんは語る。 

 

そんなバルマさんの慈善活動はしばらくの間、静かな絶望に見舞われていた。 

 

最高裁は12日、ニューデリーの街路はもはや野良犬たちのすみかではなくなったと宣言。子どもが死亡するなど、犬の襲撃に関する憂慮すべき報告を受け、最高裁は同地区のすべての野良犬を8週間以内に捕獲し、恒久的に保護施設に収容するよう命じた。 

 

この発表を受け、動物愛護家や福祉団体はパニックに陥り、推定100万匹とされる膨大な野良犬を収容できるインフラなどここにはないと訴えた。 

 

ところが22日には安堵(あんど)の波が広がった。3人の特別判事による審議を経て、最高裁は先の命令を修正し、執行停止を言い渡した。新たな判断では、当局が保護した野良犬は不妊手術と予防接種を施し、元の地域に戻すことが明文化された。狂犬病に感染しているか、過度に攻撃的な犬に限っては隔離される。

 

この判断はインド全土に適用されるという。このほか、犬への公共の場でのえさやりが禁止され、えさやりのための指定区域の創設が命じられた。

物議を醸した判決

最高裁による当初の介入は迅速かつ重大で、動物を尊重する文化が根付いた同国で物議を醸した。 

 

インドでは健康な野良犬を安楽死させることは違法であり、2001年に制定された法律では、野良犬は保護し、不妊手術と狂犬病予防接種を受けさせてから解放しなければならないと定められている。 

 

このアプローチは原則として人道的ではあるものの、全国規模で効果的に実施することは困難だった。世界で最も人口の多い国であるインドでは、犬の数も膨大だ。資金や動物病院は限られており、不妊手術のペースが犬の急速な繁殖サイクルに追いついていない。 

 

インドの通信社プレス・トラスト・オブ・インディアの報告によると、この結果、推定6200万匹もの野良犬が、全国の街路、住宅地、スラム街、村を徘徊(はいかい)する事態となっている。 

 

これらの多くは人間と共存している一方で、かみつきや命を奪うほどの攻撃、そして感染のリスクは住民を警戒させている。

 

世界保健機関(WHO)によると、人の狂犬病による死因のほとんどは犬で、すべての狂犬病の感染源の最大99%を占めている。狂犬病はインドの風土病であり、世界の狂犬病による死者の36%を占めているという。 

 

「夜遅くに歩いて帰宅する時はいつも犬の群れを通り過ぎないといけない」と、デリー在住の医学生シュリヤ・ラマニさんは話す。「弁当箱に食べ物が残っていると、犬たちが匂いをかぎつけて飛びかかってくるので本当に怖い」 

 

ハイデラバードで23年に4歳の男児が襲われ死亡した事件をめぐっては、その状況を捉えた防犯カメラの映像が国民を震撼(しんかん)させた。メディアや政界にも衝撃が走り、解決策を模索する動きが急速に巻き起こった。 

 

野良犬の数をより適切に管理するため、既存の法律に異議を唱える動きもある。16年には、南部ケララ州でかみつきが相次いだことから野良犬の駆除キャンペーンが注目を集めたが、動物愛護家からの猛烈な反対にあった。