2025年4月30日 FNNプライムオンライン
保護された犬や猫の「一時預かりボランティア」として、行き場を失った犬や猫に新しい飼い主を見つける活動を行う、長崎県在住のtamtamさん。
インスタグラムに自身の体験談をマンガにして投稿した作品が、世界文化社からコミックエッセイ『たまさんちのホゴイヌ・ホゴネコ』シリーズ第3弾として出版された。
本書では、保護活動に向き合うtamtamさんと4匹の老犬、寄りそう人々が命をつないでいくエピソードがつづられている。
その一つが、動物愛護センターにいた寝たきりの老犬「福くん」のエピソード。このストーリーはtamtamさんがセンターの職員たちから聞いた話をマンガにしたものだ。
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優しさと愛に触れた老犬「福くん」
ある日、畑の中で発見された「福くん」。衰弱し、立つことすらもままならない老犬だった。それから、長崎県佐世保市にある佐世保市動物愛護センターへ移送された。
動物愛護センターと聞くと、「殺処分をする場所」という認識も強くあるだろう。しかし、「福くん」と名付けられた老犬の笑顔を取り戻そうと、動物愛護センターの職員は必死に福くんをケアした。
飲み込みやすいように工夫されたペースト状の食事を提供したりするなど、福くんは職員たちの優しさや愛に包まれていたという。
保護当時は表情もなかった福くんだったが、歩行補助用のハーネスをつけたことで「立ちたい」という強い意思を示し、ゆっくりと歩き始めていく。
本書にはtamtamさんの言葉で「飼い主に手放されたであろう福くんを支えていたのは、いつも温かくて優しい職員さん達の手だった」とある。
その手に支えられた福くんは、笑顔も増していったが、元の飼い主は福くんの最期まで名乗り出ることはなかった。
「福くん」の最期を通して…
tamtamさんは、このエピソードをマンガにしようとした思いをこう語る。
「出会いは動物愛護センターの見学がきっかけです。そのときに保護された経緯を聞いて、こんなに手厚いケアをしてくれるんだ!と衝撃を受けました。それでマンガで描かせてください、とお願いしました」
福くんは最期をこの動物愛護センターで迎えた。tamtamさんは福くんの最期を通して、伝えたいメッセージがあると言う。
「福くんも、最期まで元の飼い主にお世話をしてもらいたかったと私は思います。ただ、多いんです。飼っていた犬や猫が年を取って手放されるケースが。人間みたいに福祉が整っているわけではないので、手間がかかるようになると大変になり手放す。そんな中でも、ケアして頑張ってくれている人たちがいることを伝えたかった」
新しい飼い主は未来を考えているか
「保護犬」や「保護猫」という言葉の認知度は高まりつつある。しかし、tamtamさんはまだ動物を飼うことや、保護された犬や猫が保護先で、適切な環境で暮らしているかどうかは課題があるとする。
だからこそ、一時預かりボランティアをするtamtamさんは、預かる犬や猫に「家庭を知ってもらう」ことに重きを置いている。それは、新たな飼い主のもと、一般家庭で暮らしていくことを想定しているからだ。
そこで重視しているのが「新たな飼い主」の見極め。「家族に迎えたい」とDMなどのメッセージが届いた後、お試し期間も踏まえながら、「本当に大丈夫か」を判断していくという。
「いろいろな保護団体がありますがどの団体も、その子にふさわしいか見極めていると思います。いろいろと質問して条件を提示するところもあると思いますが、私の場合は10年20年先を考えているか、を見ています」
例えば、「アレルギーになったら」「世話ができなくなったら」「経済的に困ったら」といった質問を重ねていく。
「多くの人は『そんなことにはらならい』とおっしゃいますが、でも実際に手放された子たちの多くは、『こうなるとは思わなかった…』なのです。新たな飼い主の方には、何かが起こってから考えるのではなく、その前にどれだけ考えられるかを見ています」
飼い主の事情などで手放された多くの犬や猫が、再び新たな飼い主から同じ経験をすることのないようにしたいという思いもあるtamtamさん。もちろん、初めからすべてを想定できるわけではないが、心構えとして持ち、「家族の一員」としてどこまで新たな飼い主が行動できるか、を判断基準にしているという。
いきなり山登りしないのと同じ
そして、保護犬や保護猫を迎えよう、ペットショップで買おうなど、これから動物を飼おうと考えている人には「覚悟よりも、準備をしてください」とアドバイスする。
「私はよく山登りで例えています。いきなり『山を登る』と言うと、『その格好で?』『その靴で?』『知識は?体力は?』となると思うんです。山登りも準備が必要なのと同じで、犬や猫など動物を飼う際に、自分たちが飼えるのか、どういった子なら迎えられるのかをしっかり考えて迎え入れてほしいです」
その迎え方は、ペットショップで買う、譲渡会などで保護犬・猫を迎える、そこに大きな違いはないと話す。さまざまな生い立ちを背負った保護犬や猫は飼育が難しいと思われがちだが、あくまで飼いやすさは個体差によるもので、ペットショップで迎えても変わるものではないという。
「最近、保護犬や猫のハードルが高いという話を聞きます。しかし、ショップだろうと譲渡会だろうと、成犬・子犬であっても、飼いやすい、飼いにくいに違いはありません」
人間と同じように犬や猫も「100匹いたら100通りの性格がある」。初めて犬や猫を飼おうと考えている人こそ、tamtamさんは「保護犬・猫は、私たちのようなサポートがあるのでオススメです」と話す。
「まず私たちが一緒に生活をしているので、その子の性格などを把握しています。いろいろな対処の方法やアドバイスも可能です。私たち保護活動者が願っているのは、“終生幸せでいてくれること”です。私たちのような何かあったら相談できる相手がいるのは、飼い主の方からすると心強いと思います」
tamtamさんは「私も正直、新しい子を一時預かりする際に自信がなかったり、悩んだりすることもあります。もちろん、いろいろ悩んでその結果、飼わないと選択することも動物愛護だと私は考えています」と付け加える。
保護された犬や猫に家庭的な環境を提供し、新しい飼い主へとつなぐ活動に、日々まい進するtamtamさんの同シリーズの本は、「アニマルドネーション」への寄付や小学校へ寄贈する活動も行われている。