帰還困難区域でペットの猫が野生化…捕獲・保護するNPOが写真展「考える材料に」 | トピックス

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2024年3月5日 読売新聞

 

捕獲器を設置する小西由美子さん(2月11日、福島県浪江町で)=富永健太郎撮影© 読売新聞

 

 東京電力福島第一原子力発電所事故の帰還困難区域で、置き去りにされたペットの猫が子を産んで野生化し、保護団体がこれまでに捕獲した数は3000匹を超えている。人の気配が絶えた山里は景色も一変した。団体は、野生動物や地域の風景を撮りためた写真などの展示会を開催し、命の大切さと被災地の現状を伝えている。(福島支局 山口優夢)

 

 2月中旬、福島県浪江町の山あいにある帰還困難区域の津島地区。認定NPO法人「未来といのち」(福島県郡山市)代表の小西由美子さん(68)が、人の出入りが絶えた建物の軒下に、捕獲器を設置した。中にはにおいの強いペットフード。引き寄せられた猫がケージに入ると、扉が閉まる仕組みだ。小西さんは「寒い日の後に天気が良くなると、猫が入りやすい」と話す。

 

 原発事故では、避難所に連れていけないペットの犬や猫が置き去りにされたり、飼い主とはぐれたりするケースが多発した。群れて危険な犬は保健所が優先的に保護して姿が見えなくなったが、繁殖力の強い猫は現在も新たな保護が続く。保護された猫は、NPOが管理するシェルターで譲渡先が見つかるのを待つ。

 

 原発事故当時、支援物資を持って役場などを回った小西さんは、住民から自宅に残してきたペットの世話を頼まれた。これが保護活動のきっかけとなった。

 

 人のいなくなった街を徘徊(はいかい)するやせ細った猫のほか、牛舎で鎖につながれたまま死んでいく牛、人が近づくとエサを求めて鳴くニワトリ――。取り残された動物たちの悲惨な最期をいくつも見てきた。

 

 「人間の都合で取り残された動物たち。人間がその命に責任を持つべきだ」。そんな思いで、ほぼ毎週末、自宅のある東京から通い続けている。

 

 この13年間、帰還困難区域の風景は大きく変わった。浪江町の津島地区では当初、一時帰宅する住民を見かけたが、今では人の姿はほとんどなく、家屋も解体されて更地になった。「最初から人が住んでいなかったみたいだ」

 

 こうした活動中に目にした動物の姿や風景を、NPOは写真に撮りためてきた。東京都内や仙台市など各地で展示会を催し、こう訴えている。

 

 「動物は置き去りにされ、人は帰れない。この記録を、次の世代に考える材料としてほしい」と。