2024年2月23日 東洋経済オンライン
亡くなったペットは「ゴミ」なのでしょうか……(写真:HIME&HINA/PIXTA)
© 東洋経済オンライン
兵庫県尼崎市が、亡くなったペットを引き取る際の手数料の支払い方法を、事前購入する「ゴミ処理券」から「現金」に変更したというニュースが報じられました。
【図で見る】滋賀県大津市のペットの火葬費用。火葬だけの「収骨しない場合」と「収骨する場合」場合があり、後者の費用は前者の2倍近くがかかる。
報道によると、ゴミ処理券を使うことから、飼い主から「愛犬をゴミ扱いすることに抵抗がある」などの批判があり、SNSを中心にその対応を疑問視する意見が上がっていたとのこと。
これを受け、同市は「大切な家族の一員を失った市民の心情に寄り添いたい」と、昨年7月にはホームページ上のペットの死後の扱いについての案内を、「ごみ・リサイクル」から「衛生・ペット」の欄に変更しました。
法律上は廃棄物=ゴミ扱い
「ペットはゴミなの?」と多くの飼い主は思ったことでしょう。筆者も愛犬や愛猫と共に暮らしているので、その気持ちはとてもよくわかります。
現行の廃棄物処理法では「動物の死体」は「廃棄物」とされています。そのため、法律上はゴミとして焼却しても問題はありません。
しかしながら、動物愛護管理法の第2条では「動物が命あるものであること」「人と動物の共生に配慮しつつ、その習性を考慮して適正に取り扱うようにしなければならない」としていることや、犬や猫などの動物に対する人々の感情の変化から、各自治体においてもさまざまな工夫をし、ゴミと同じ扱いを避ける傾向にあります。
ただ、残念ながら「家族の一員であったペットを大切に供養したい」という飼い主の気持ちに、追い付けない状態であるのが現状です。
そんななかで、できるだけ寄り添う方向に動いている自治体もあります。
自治体で異なるペットの引き取り
亡くなったペットの引き取りの対応は、自治体により大きく異なります。
例えば、滋賀県草津市の場合、市のホームページの市営火葬場の案内には、「※ペットの火葬はお受けできませんのでご了承ください」との記載があります。
同市に住むYさんは、「自治体でペットの火葬の対応がないので、民間業者に依頼をした。知人もペットが亡くなったときにはそうしたと聞いている」とのこと。自治体の対応がない場合には、自分で民間業者を探す飼い主が多いそうです。
一方、隣接する大津市は、大津聖苑・志賀聖苑の各火葬棟で、ペットの火葬を行っています。専用の動物火葬炉を備えていて、利用料金は異なりますが、市民(使用者の住所が市内かどうか)だけでなく、市民以外も利用可能です。また、火葬後に収骨することもできます。
出典:大津市ホームページ「動物(ペット)火葬の利用料金について」より https://www.city.otsu.lg.jp/soshiki/010/1115/g/pet/1389774664521.html
© 東洋経済オンライン
上の表を見ると、火葬だけの「収骨しない場合」では、冒頭で紹介した尼崎市の利用料金よりかなり高額で、下の表の「収骨する場合」の費用も、「収骨しない場合」の2倍近くがかかります。
動物火葬炉の設備費や維持費、人件費などが必要となり、利用料金はそれに伴い高くなるのが実情で、動物の重量によっても上下します。自治体運営であっても、手厚い供養にはそれなりの費用がかかるということです。
筆者も滋賀県に在住していたときに愛犬のボルゾイが亡くなり、他市民として大津聖苑を利用したことがあります。収骨には入れ物が必要で、大きな骨壺を持参しました。
収骨の際には、担当の職員の方が愛犬の骨をていねいに扱ってくれました。「これが喉仏(のどぼとけ)ですよ」と、骨の説明もしてくれたことが印象に残っています。愛犬は50kg以上あり、他市民の利用料金は4万円でしたが、対応内容などから納得のいく利用料金だと思いました。
亡くなったペットを一般家庭ゴミと一緒の焼却炉で焼かないためには、大津市のように市営火葬場などに動物火葬炉を置く必要がありますが、自治体によりさまざまな問題をクリアしなければならず、一筋縄ではいかないと耳にしたことがあります。
尼崎は飼い主の心情に寄り添っている?
尼崎の話に戻りますが、ペット(犬・猫などの小動物)が亡くなったら、飼い主の自宅などに市の職員が引き取りにいく(1体あたり2700円)か、飼い主が直接クリーンセンターへ持ち込む(1体あたり1300円)かのいずれかの対応をしています。
同市は「ペットが使っていた思い出の品々も一緒に預かるなど、きめ細やかな対応をしていきたい」としていますが、引き取られた後は市のクリーンセンターで一般家庭ゴミと一緒の焼却炉で焼かれることに変わりはなく、「火葬方法は従来通り、そのため遺骨や位牌は返せない」としています。
しかしながら、ぺットを引き取る際の手数料の支払い方法を「ゴミ処理券」の購入ではなく「手数料」として現金で徴収することとし、利用料金を変更することなく、亡くなったペットを飼い主の自宅などに市の職員が引き取りにいくとしたのは、「飼い主の心情に寄り添う」という点において、できる限りの対応をしていると筆者は考えます。
大切なペットの死について考えることは難しいでしょう。ですが、自分の住んでいる自治体がどのような対応をしているのかは、飼い主は事前に知っておく必要があると思います。
自治体のホームページでも確認できますが、見つからない場合は、「○○県○○市ペット火葬」と検索するとよいでしょう。自治体での対応が十分ではない場合 、大津市のように他市民でも利用できる場合があるので、近隣の自治体の情報収集もしておくといいかもしれません。
また、手厚い供養を望む場合には、民間業者の利用を検討しておくことをおすすめします。
ペットの供養は、ペットと飼い主の関係で考えるものであり、人間のように先祖代々という永続的なものではありません。そのため、飼い主やその家族が納得のいくやり方で行うのがよいと考えます。
民間業者を利用する場合は、下記のようないくつかの方法があります。しかし、民間業者によって料金や付随するサービスが違いますので、比較検討して納得のいく方法を選択することが大切です。
ペットの供養の方法と火葬のしきたり
■合同葬:他のペットと一緒にお経をあげてもらい、その後に合同火葬をしてもらう方法。火葬の立ち合いや骨上げはできない。基本的に遺骨は他のペットと混合され、共同墓地や合同供養塔などに埋葬される。
■一任個別葬:一緒にお経をあげてもらい、その後に個別に火葬してもらう方法。業者にすべての業務を一任することになるので、火葬の立ち合いや骨上げはできない。遺骨は納骨、埋葬、返骨が可能。
■立ち会い個別葬:一緒にお経をあげてもらい、その後に個別に火葬してもらう方法。業者に一任するのではなく、飼い主が立ち会いながら火葬をし、骨上げを行う。遺骨は納骨、埋葬、返骨が可能。
■自宅葬:民間業者が飼い主の自宅まで出向いて、すべての業務を行う葬儀。お経をあげてもらい、その後に移動火葬車にて火葬を行う。骨上げもできる。人間と同じように友人や知人を招き、「お葬式」という形でペットを見送ることも可能。
筆者は人間の葬儀社で働いた経験があるのですが、火葬のしきたりが東西でおおよそ異なり、火葬後の骨上げは、すべての遺骨を6寸以上の大きな骨壺に納める「全部拾骨」と、部分的に5寸以下の骨壺に納める「部分拾骨」に分かれることを知りました。
ペットの場合も関西の民間業者がその火葬のしきたりに従って、「部分拾骨」で飼い主に返したケースがあると耳にしたことがあります。
依頼の際には「全部拾骨」であるか確認する必要があります。また、なかには悪質な民間業者もいますので、料金の詳細や総額などを事前に確認し、必ず書面で受け取るようにしましょう。
今回のニュースでは、亡くなったペットは「ゴミ」なのかということで、注目を集めました。
亡くなった後の対応については、自治体を利用するにしても、民間業者を利用するにしても、納得のいく供養ができるようにするにはペットが元気なうちから比較検討しておくことが大切です。
もしものときにあわてて選択し、後悔したという飼い主も少なくありません。「ペットは大切な家族」と思えばこそ、愛するペットにふさわしい供養を飼い主の責任としてしっかりと考えたいものです。