愛犬との切ない別れ 同行避難の「壁」 社会部発 被災地から | トピックス

トピックス

身近で起こっている動物に関する事件や情報の発信blogです。

2024年2月8日 産経新聞

 

地震発生から1週間以上が経過し、避難所となった石川県穴水町役場で取材していたときのこと。避難者の高齢男性が連れていた黒いシバイヌが、人懐こく体を寄せてきた。愛くるしい姿につかの間、心が癒やされた。

 

災害時には、男性のようにペットを連れて避難する「同行避難」が原則とされる。ただ、全てのペットが避難生活に適応できるわけではない。支援団体に愛犬を預ける決断をする人もいた。

 

「この環境に置いておくのはかわいそう」。ペットを一時預かりするNPO法人の職員と面会し胸をなでおろしていたのは、同県内灘町の女性(54)だ。目線の先には、黒白の長い毛が特徴的なボーダーコリーがいた。名前は「レオン」。噛み癖があり、女性が前の飼い主から引き取って自宅で面倒を見ていた。

 

女性は金沢市の知人宅に身を寄せたが、レオンは動こうとせず、被災した自宅に残すことに。通いで世話をしていたが、断水で清掃もままならず衛生環境は悪化。「限界だった」とこぼす顔に、疲労がにじんでいた。

 

抵抗するレオンをNPO職員らが数人がかりで誘導し、ケージの中へ。環境が整えば、また一緒に暮らすことができるが「こんな状態じゃ、帰ってこれない」。電柱や道路が大きく傾いた町を背に嘆いた女性の言葉に、日常を取り戻す道のりの険しさを痛感した。(吉沢智美)