能登地震、ペットと避難を模索 国は指針で「同行」推進 | トピックス

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2024年2月5日 日本経済新聞

 

 

能登半島地震の被災地では、ペットとともに避難した人も少なくない。東日本大震災後に国は避難所などへの「同行避難」を推進する指針をまとめたが、「周囲に迷惑をかけたくない」と車中泊を続ける人もいる。長い避難生活で心の支えとなるよう、避難所にペットの居場所を整える取り組みも少しずつ広がる。

 

用具置き場だった場所にシートが敷かれ、ケージが並ぶ。金沢市の「額谷ふれあい体育館」には犬や猫のための専用スペースが置かれている。

 

地元を離れて身を寄せる石川県輪島市などの被災者から、「ペットを連れて行きたい」と強く要望されたことがきっかけだった。同市から愛犬を連れ避難した出村達美さん(58)は「我が子同然なので本当にありがたい。同行できなかったら避難していなかった」と話す。

 

災害時のペットの扱いはこれまでも課題になってきた。避難所には動物が苦手な人やアレルギーの人も身を寄せる。鳴き声の心配もある。飼い主にとっては家族同然で手放しがたく、被災した自宅にとどまったり、車中泊を続けたりするケースは多い。

 

2011年の東日本大震災では、東京電力福島第1原子力発電所事故に伴う避難指示で自宅に残されたペットが野生化。一緒に避難しても避難所で受け入れが認められないケースもあった。

 

このため環境省は13年、「ペットは家族の一員であるとの意識が一般的になりつつあり、飼い主の心のケアの観点からも同行避難が重要」として対応指針をまとめた。

 

 

指針は同行避難を促すために▽一般の避難者とペットの動線を分ける▽決められた場所で飼い主が管理する▽衛生管理を指導する――といった対応を自治体に求めた。環境省によると、16年の熊本地震では同行避難が広がったという。

 

能登半島地震の避難所でも受け入れの動きが出ている。

 

200人以上が避難する「いしかわ総合スポーツセンター」(金沢市)では2日時点で、ペットの飼育用にトレーラーハウス2台を設置。無料でペットフードや衛生用品を利用できる。必要があれば追加の設置も検討する。

 

石川県獣医師会はペットの一時預かりを始めている。環境省によると、1月21日時点で県内の動物病院などでは犬や猫、鳥など131匹が預けられている。

 

 

被災地で支援活動を続けるNPO法人「日本レスキュー協会」(兵庫県伊丹市)の松崎直人さんは「今までの災害よりもペットとの避難に理解が生まれている」と評価する。一方で「避難所へ連れて行ってよいのか分からない」との声もあちこちで聞いた。同行を認めなかった避難所も少なくないという。

 

日本獣医師会の佐伯潤・危機管理統括は、野犬などが増え人に危害を加えないためにも同行避難が必要と指摘。「心の支えであるペットを手放す選択を飼い主に迫るのは酷なこと」とし、ペットと生活できる仮設住宅などの確保を求める。

 

(島村瑞稀、高橋彩)