2023年9月23日 朝日新聞デジタル
ポニーの「スターナイト」、レッサーパンダの「リボン」、そしてライオンの「シジミ」――。人気者たちの在りし日の姿をとらえた写真が祭壇に飾られた。徳山動物園(山口県周南市)で21日、この1年に死んだ約70匹の動物たちや市民のペットを追悼する供養祭が営まれた。人々の心をなごませ、笑顔を与えてくれた「小さな命」。参列者らが感謝の気持ちを伝え、動物愛護への決意を新たにした。
左からポニーの「スターナイト」、レッサーパンダの「リボン」、ライオンの「シジミ」。祭壇に人気者だった3匹の遺影が飾られた=2023年9月21日午前9時31分、山口県周南市徳山、三沢敦撮影
「一緒に遊んだ動物さんたち、どうぞ安らかにお眠りください」
「私たちも動物をいじめたり、けがをさせたりしませんから」
降りしきる雨の中、祭壇が設けられた中央テラスに、近くの河原幼稚園の園児らの言葉が響いた。
動物愛護週間(20~26日)に合わせ、県動物保護管理協会が毎年のように営んできた供養祭。コロナ禍を経て4年ぶりに営まれた式典に、市や県、獣医師会などの関係者ら約130人が参列した。市民らも焼香に訪れた。
徳山動物園によると、昨年9月から今年8月までに園内で30種73匹が死んだ。飼育下のため事故で命を落とす生き物は少なく、大半は老衰や病気だ。
コロナで例年のように供養祭が開けなかった間は、この時期に飼育員やスタッフで手を合わせ、追悼してきたという。
「ただ、供養祭は一般に公開することに大きな意味がある」と同園の担当者は話す。この夏に死んだシジミのようにお別れ会が開かれたり、献花台が設けられたりするのはごく限られた人気者だけ。それ以外にもたくさんの生き物が死んでいる現実を知ってほしい。何よりも、「小さな命」を大切にする心を育んでほしいという。
県動物保護管理協会の藤原宣義会長は式典の冒頭で、ペットブームの影で飼育放棄や遺棄、虐待が横行している現状に触れ、「家族の一員として仲間入りした動物たちの一生の責任を持ってほしい。動物たちの命の重さを感じてほしい」と呼びかけた。
県生活衛生課によると、2022年度に県の8保健所が捕獲した野犬は1069匹で、このうち713匹が県周南環境保健所管内(周南市、下松市、光市)だった。うち513匹を周南市が占めている。
市内では近年、周南緑地公園周辺で、心ない飼い主が捨てた犬が大繁殖。市は野犬対策を最重要課題の一つに位置づけ、むやみな餌やりを条例で禁止するなど対策を講じるが「悪循環のいたちごっこ」は絶えない。市環境政策課によると、今年度も8月末までに110匹が捕獲され、市民が野犬にかまれる被害も1件起きているという。
命を大切にして、人間と動物が共存する社会へ。藤井律子市長はあいさつで園児たちにこう語りかけた。
「動物たちへの追悼の言葉、涙が出るほどうれしいです。動物を大切にしている気持ちがよく分かりました。皆さんも自分の命を大切にして元気に大きくなって下さいね」(三沢敦)