2023年8月28日 長野放送
特集は人気上昇中のヤギ。厄介な雑草を食べてくれるだけでなく心を和ませてくれるとして、引く手あまたの人気ぶり。レンタルをしている牧場では「順番待ち」となっている。最新事情を取材した。
【動画で見る】「草刈り代行」ヤギのレンタル順番待ち 料金は3カ月3000円 心も和ませ超人気 名前は“草取正雄”
■会社の敷地でムシャムシャ
こちらは長野県岡谷市の金属加工会社・今井商工。7月、新たな仲間を迎えた。
従業員: 「かわいいー」
5月1日に生まれた双子のヤギ。2頭ともオスで、名前は兄が「にいに」、弟が「めえめ」。南木曽町の牧場から買い取り、工場の横に小屋を建てて飼育している。
リードをつけてもらい勢いよく飛び出すと、雑草が生い茂る会社の敷地でムシャムシャと草を食べ始めた。これがヤギを飼育するようになった理由の一つだ。
今井商工・福本克三 企画室長: 「(目的は)環境負荷の軽減と従業員の癒やしということで、当社もSDGs推進登録企業で申請してて、ヤギを飼うことになりました」
会社の敷地は1万2千平方メートル。その3割ほどが空き地となっていて夏場は雑草が伸び放題。
これまではシルバー人材センターに依頼して、年2回、草刈り機で刈ってもらっていたが、燃料を使わない「エコな除草を」とヤギを飼うことにした。ヤギは1頭あたり1日に3キロから5キロ、面積にして6畳分ほどの草を食べるといわれている。
■従業員たちの癒やしの存在にも
「メェ~」
従業員: 「鳴いた」
従業員が持ち回りで世話をしていて、予想通り、2頭は早くも従業員たちの癒やしの存在にもなっている。
従業員: 「よく鳴くし、かわいいですね」
「癒やされて時間を忘れていいですね。仕事ずっと集中しているので、ちょっとホッとできていいと思います」
会社では近隣の保育園児たちにヤギとふれあってもらうことも検討中。いずれ2頭は会社の「広報担当」にもなる。
今井商工・福本克三 企画室長:
「『広報・宣伝』ですね、一応もう社員になったので、これからこの子たちを媒体にして会社のイメージアップも図っていきたいなと。このまますくすく大きく人懐っこくいてもらえたら」
■サルの追い払いにも効果
県内でも注目されるヤギの飼育。以前、紹介した小谷村の集落では農地の雑草を食べてくれるだけでなく、サルの追い払いにも効果を上げていた。
もちろん、住民たちの心も和ませている。
伊折集落の住民: 「かわいいよね。生き物はかわいいや」
■“草刈り代行” レンタルは順番待ち
ヤギの人気ぶりをうかがえる施設がある。伊那市の「産直市場グリーンファーム」。
動物たちとふれあってもらおうとロバやヤギを飼育し、15年ほど前からレンタルにも対応している。
ヤギのレンタルは1頭で3カ月・3000円。最大6カ月まで延長可能。現在、7歳前後までの70頭ほどがレンタルの対象となっているが―
産直市場グリーンファーム飼育部主任・小池裕子さん:
「今は貸せるヤギが全てレンタル中でして」
ヤギは農家を中心に引く手あまた。リピーターも多いということだ。現在、20組が順番待ちをしていて、早くて1カ月待ちという状況。
産直市場グリーンファーム飼育部主任・小池裕子さん:
「エコな除草として人気が出てる。地域の人でヤギを待っているという方もいて、借りていく方も多い。『ヤギがこの家には来るよ』という情報があるみたいで、地域全体で交流があるということで、ヤギを借りる方がここ何年か増えている」
■若者もヤギを地域との交流に活用
ヤギを地域との交流に生かしている若者たちもいる。
ヤギ親衛隊・上野真太郎さん:
「ヤギは頭をつつき合うのが遊びみたいで、たまにこうやって頭を角持って押し合いみたいなことをすると楽しいかなって。なかなか体力使いますけど…」
こちらは信州大学の学生有志「ヤギ親衛隊」。キャンパスに近い畑の一角に小屋を建ててヤギを1頭を飼っている。
ヤギの名前はー。
ヤギ親衛隊・山本果凛代表:
「草取正雄です。(オス・5歳)私がつけたわけではなく、創始者がつけたので『草刈正雄』が好きだったかもしれないです」
2016年に発足したヤギ親衛隊。「ヤギのミルクを飲もう」というのが出発点だったが、今はヤギとボランティア活動もしている。
ヤギ親衛隊・山本果凛代表:
「夏の期間は地域の草刈りボランティアに出かけたり、地域のイベントに呼ばれたら行く活動をしている」
■「ありがたい、ますます愛着が」
この日は「正雄」を軽トラに乗せて、農地の草刈りへ。
ヤギ親衛隊:
「ここです。(きょう終わりそうですか?)終わらせます」
大人の背丈ほど伸びた雑草。東京在住の人から「実家の農地の草を何とかしてほしい」と依頼された。
早速、「正雄」は草をムシャムシャー。
でも、「正雄」だけに任せていたら、いつ終わるかわからない。
学生たちが必死に草を刈る。
ヤギ親衛隊・上野真太郎さん:
「正雄君はグルメさんなので、もっと雑草食べてねって感じです。(草刈りの戦力にはなってる?)正直言うとマスコットなので、そこはノーカウントでいかせていただきます」
一緒に草刈りをした依頼主の親族は―
親族・川上滉さん(13):
「最初は怖かったけど、見るうちにかわくて愛着わいてきました」
親族・中村徹さん(77):
「本当にありがたくやってくれるもんですから、ますます頑張ってもらいたい」
ヤギ親衛隊・山本果凛代表:
「ヤギを通して私たちがいろんな人とのつながりとか持てているので、イベントにはたくさん、これからも行けたらな」
厄介な雑草を食べ、心も和ませてくれるヤギ。
ますます、重宝されそうだ。