毛皮産業の闇、愛護団体が動物の窮状を極秘撮影 フィンランド | トピックス

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2023年1月30日 時事通信ニュース

 

【ヘルシンキAFP=時事】小さな鉄製の籠に押し込められ、異常に太ったり、感染症にかかったりしたキツネや、きょうだいの死骸を食べる姿も──。AFPは、動物愛護団体がフィンランドの毛皮農場を極秘に撮影した映像を入手した。映像は、毛皮産業の闇を映し出している。

 

 

≪写真は小さな籠の中で飼育されるキツネ≫


 フィンランドは年間100万枚近くの毛皮を生産しており、欧州では最大の生産国で、世界でも中国に次ぐ規模だ。映像は、禁止を求める圧力にさらされているフィンランドの毛皮産業の問題を浮き彫りにした。


 左翼同盟のマイ・キベラ議員はAFPに対し、「フィンランドの毛皮農場は現時点までに禁止されているべきであり、実現していないことは恥ずべきことだ」と語った。

 

 昨年12月には、欧州市民イニシアチブで欧州全域での毛皮産業の禁止を求める署名が100万筆に達し、欧州連合(EU)の行政執行機関である欧州委員会に対して立法を提案できる状況になった。


 サンナ・マリン首相は2020年、左翼同盟などに追随して毛皮産業の禁止に賛同する意向を表明した。


 だが、フィンランド議会では、全面禁止を支持する議員は少数派だ。3億6000万ユーロ(約510億円)の輸出額を誇る毛皮産業は、一部の農村部にとっては重要なものとされているためだ。


 ■「ぞっとするほどひどい」状態

 AFPに映像を提供したフィンランドの動物愛護団体によると、映像は昨年、6か所の毛皮農場で極秘に撮影された。動物の健康管理を認証しているフィンランド毛皮生産組合はAFPに対し、このうちの4か所に認証を与えていると認めた。


 AFPが公開したのは、認証済みのこれら4か所の映像だ。その中には、耳や尾に感染症が見られたり、目の病気を患ったりしているキツネが映っていた。また、異常に太っているため本来の姿が想像できない個体もいた。


 活動家のクリスト・ムーリマー氏は、「これらの農場の動物の状態はぞっとするほどひどい」と批判した。


 同氏は、フィンランドの動物保護に関する法律は「欧州の基準から大きく後れを取っている」のが現状で、「動物の観点からすれば、フィンランドのあらゆる毛皮農場が大なり小なり同じような状況だ」と指摘した。


 ■「実態を反映していない」

 毛皮生産組合は「不法侵入」だと無許可撮影を非難し、映像は実態を反映していないと反論。広報担当者は「毛皮農場の完全に誤った姿、一方的な側面を捉えたにすぎない」と強調した。


 同組合は近く事実関係を確認するため農場に獣医師を派遣する予定。広報担当者は「これら四つの農場は、生産者が動物を適切に世話しており、管理運営が徹底され、認証されている」としている。


 担当者はその上で、「一般論として、農場に5000匹、1万匹と動物がいれば、急に目や耳の感染症にかかった動物がいてもおかしくはない」と主張した。


 ■全面禁止求める声も
 欧州諸国では、オーストリアや英国を含めて数か国が毛皮農場を禁止しており、新型コロナウイルス感染症の流行を受けてこの流れは加速している。フランスやオランダ、エストニアが追随したほか、デンマークはコロナ感染拡大後に、毛皮農場のミンク全頭の殺処分に踏み切った。

 

 オーストリアとオランダは2021年、EUに対して毛皮農場を閉鎖するよう求め、ベルギーやドイツ、ルクセンブルク、スロバキアが賛同した。


 これに対し、フィンランドの毛皮生産組合は、EUが基本理念として「人・物・資本・サービスの移動の自由」を掲げている以上、毛皮農場や毛皮取引を禁止すればこうした原則に反すると主張した。


 組合の広報担当者は、フィンランド農村部では毛皮産業は非常に重要で、約3000人の雇用を創出しており、「動物を扱う農村部のその他の家畜産業と何ら変わらない」と語った。