2022年11月17日 BUSINESS INSIDER JAPAN
キャスパー動物愛護協会に保護されている「グリッツ」と「ステットソン」。(Casper Humane Society)
インフレの影響でペットを手放さざるを得なくなる飼い主もいると、動物保護施設は話している。
保護動物の数が増える中、動物保護施設は価格高騰や寄付の減少といった課題にも直面している。 景気後退が近付く中、こうした施設では「生きるために施設が頼りの」動物たちを断らなければならなくなるかもしれない。
動物保護団体ベスト・フレンズ・アニマル・ソサエティによると、アメリカでは多くの動物保護施設が「満杯もしくは定員オーバー」になっている。
インフレが進み、経済不安が高まる中、保護されるペットが増える一方で、保護動物の受け入れは「遥かに遅れている」という。
ワイオミング州にあるキャスパー動物愛護協会は、「(動物の数が)あまりに増え過ぎた」ため、新たな保護動物の受け入れをストップせざるを得ないと感じているとInsiderに語った。
ペットと迷子の動物の両方を受け入れてきたこの保護施設では、常に100匹前後の動物を世話してきた ── 約60匹のねこ、40匹の犬に加え、げっ歯類や爬虫類といった「さまざまな小動物」も受け入れてきた。
キャスパー動物愛護協会の責任者クレイグ・カミングス氏は、飼い主に捨てられたペットの数が増えていると話した。施設は1年を通じて"定員オーバー"の状態で運営せざるを得ず、今も100匹以上の犬、少なくとも200匹の猫が"安全な家"を待っているという。
「毎日のように、ペットをもう飼えなくなったという飼い主や、家を失った飼い主から連絡を受けています」とカミングス氏は話している。
価格高騰と住宅不安が、ペットの飼い主たちを難しい状況に追いやっている。 アメリカ動物虐待防止協会(ASPCA)の試算では、犬を飼うには年間1391ドル(約19万4000円)、猫を飼うには年間1149ドル(約16万円)の費用がかかるものの、インフレが進む中、ペットの世話にかかる費用はさらに高くなっている。
動物保護施設も価格高騰に直面していて、事態の収拾に苦戦している。
カミングス氏がInsiderの取材に応じた11月初め、ワイオミング州にある施設周辺の気温はマイナス3度で雪が降っていた。
「うちの保護施設に今いる動物は運が良かったと思います。安全で暖かい場所にいられるし、天気が悪くても動物たちと過ごす時間を大切にしてくれる人間がいますから」とカミングス氏は語った。
同氏は保護施設が満杯になったら、ペットに何が起こるか心配している。
「保護施設が満杯で、自分たちの手元にリソースもなければ、飼い主はどうしたらいいか分からなくなるでしょう。ソーシャルメディアで新たな飼い主を見つけようとする人も多いですが、危険なケースもあります。ペットが自力で生き抜き、新しい家族を見つけることを祈って、ペットを捨てる飼い主もいます」
「冬のワイオミングで、ペットがひとり屋外で生き抜く可能性はほとんどありません」