2022年10月26日 茨城新聞クロスアイ
子どもたちに保護犬の存在を知ってもらおうと、動物愛護の啓発グループが茨城県内で始めた学校でのポスター掲示活動が全国に広がりを見せている。2020年9月に県内の小中学校などで掲示されたのを皮切りに、これまで47都道府県約1万3500校に広まった。殺処分になる保護犬を生み出さないための優しい啓発活動で、「救う選択肢があります」と幸せな犬の姿を見せて、子どもたちに命の大切さを訴えている。
ポスターはA1~4判のカラーで2種類。いずれも里親の元で幸せに暮らす保護犬の写真約100枚を並べ、「つなぐ命♡みんな家族」「犬を飼う第1選択肢を保護犬に!」などと呼びかけている。
保護犬の新しい飼い主らでつくる団体「保護犬のわんこ(保護わん)」(東京、巽祐一郎代表)がクラウドファンディング(CF)で資金を募り、全国に広めた。
活動はもともと県の犬猫殺処分ゼロ推進活動の一環。「保護わん」の企画・広報担当でもある一木麻実さんが、県内啓発グループ「いばらきのシッポの幸せの会」の活動として20年4月に企画し、県の補助を受けて独自のポスター(A4判、カラー)を作成した。この年に県内44市町村の教育委員会に説明し、計688の小中、特別支援学校に配り、子どもたちが目にする場所に掲示してもらった。
茨城県での活動が保護わんの交流サイト(SNS)で紹介されると、会員から「全国でもやるべきだ」との声が上がった。翌21年に団体が全国プロジェクトを立ち上げ、CFを開始。デザインを犬用に改め、掲載する保護犬の写真1枚につき4千円を集めるなどして資金を募った。完成したポスターは印刷できるようホームページに公開。全国にいる会員らが地元の教育委員会に働きかけ、学校での掲示を広めた。
全国展開のポスター掲示に初めに理解を示したのは茨城県の県教委。県立高96校にポスターが配られたのを皮切りに、東京都なども賛同し、茨城県発の啓発活動が瞬く間に全国に広まった。団体によると、8月20日現在で47都道府県461教委1万3563校で掲示されている。
私立校への紹介も始まり、県内では常磐大が協力。幼小中高大の一斉掲示は初めてという。
ただ民間団体のポスターを学校で掲示してもらうのは容易ではなかった。地域間で温度差があり、「前例がない」や「公のものでないから」「子どもが飼いたがるのは困る」などの理由で断られるケースがあった。このため団体は国の「お墨付き」を得ようと奔走中。環境省の「後援」をもらって、さらに啓発活動に弾みをつけたい考えだ。
巽代表は「飼育放棄や多頭飼育崩壊といった現実をなくすためにも、子どもたちに保護犬のことを知ってほしい。ペット店で購入するという消費行動の裏にある事実を知ってもらいたい」と話している。