2022年7月19日 徳島新聞
2021年度に徳島県内で殺処分された猫は50匹で、県動物愛護管理センター(神山町阿野)が開設された03年度以降で最少となった。03年度は3692匹だったが、飼い主への適正飼育の啓発活動などを通して大幅に減少。近年は、里親を探す動物愛護団体に譲渡されるケースが増えたほか、過度な繁殖を防ぐ試みも始まっている。
センターによると、県内の殺処分数は06年度まで3千匹台だった。担当者は「所有権放棄を希望する飼い主に適正管理の責務を果たすよう伝えたり、やむを得ない場合のみ引き取ることを訴えたりしてきた。その後、飼い主のモラルも向上し、殺処分が減少した」と話す。
ここ数年、大きな役割を担い始めたのが、保護した猫を里親に引き渡す動物愛護団体の活動だ。センターから団体への譲渡は、統計の残る17年度は19匹だったが、21年度には3倍超の66匹に増えた。
団体の一つ、ボランティア施設「保護ねこるーむBoron(ボロン)」(北島町中村)は19年の発足から2年半で、センター以外の猫も含めて255匹の里親を見つけた。保護猫に触れて適切な飼い方を学んでもらう機会も毎週末に設けている。
過度な繁殖を防ぐため、飼い主のいない猫を捕獲して不妊・去勢手術を施し、元の場所に戻す「TNR活動」も広がっている。徳島市や小松島市など12市町は19年度から手術費を助成しており、21年度は計524匹が施術を受けた。
近年はペットが繁殖し過ぎて飼いきれなくなる「多頭飼育崩壊」が社会問題化している。県内では猫の事例で20年度に7件、21年度に8件が確認されている。
ボロンの運営者の一人、木村浩恵さん(55)=鳴門市大麻町桧=は「元気なペットに手術を施すことに抵抗感を抱く人もいるが、施術は早期が望ましい。過度な繁殖を防ぎ、生殖器の病気の予防にもつながる」と話す。
来年はセンター開設20周年を迎える。センターや動物愛護団体の関係者はさらなる殺処分減を目指している。