犬452匹をケージに拘束、熱中症で死んだケースも…杉本彩さん「放置した行政も罪深い」 | トピックス

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2022年3月21日 讀賣新聞オンライン






 劣悪な環境で多数の犬を飼育し、虐待したとして動物愛護法違反(虐待)に問われた建設会社「大翼建設」(長野県松本市寿北)の元社長(61)の初公判が16日、長野地裁松本支部(高橋正幸裁判官)であった。罪状認否で元社長は「間違いありません。その通りです」と起訴事実を認めた。


 起訴状などによると、元社長は2021年9月2日、運営していた同市中山の飼育施設で犬362匹、同市寿北の飼育施設で90匹の計452匹をケージに拘束して衰弱させ、虐待したとされる。


 検察側は冒頭陳述で、元社長が週に1度、埼玉県内のオークションに20~30匹を出荷し、18年10月~昨年7月に約4億2000万円を売り上げる一方、中山の施設では売れ残ったり、先天的な障害があったりする犬、寿北の施設では妊娠して出産が間近な犬などを飼育していたと指摘した。


 証拠調べでは、最大4段積み重ねられた金網のケージで、複数の犬が一緒に飼育されていた施設内部の動画を公開。「中山の施設はエアコンが一台もなく、熱中症で死ぬ犬もいた」などとする元社長の供述調書も読み上げた。検察側は寿北の施設で虐待したとされる犬を107匹から90匹に訴因変更した。


 傍聴した公益財団法人「動物環境・福祉協会Eva(エヴァ)」(東京都渋谷区)の理事長でタレントの杉本彩さん(53)は記者会見で、「(映像の犬は)想像を超え、言葉を失い、怒りと悲しみを抑えるので必死だった。放置してきた行政も罪深い」と話した。


検査日を事前調整、抜き打ちせず

 多数の犬が劣悪な環境で飼育されていたとされる今回の事件。長野県の検証チームがまとめた報告書では、長年にわたって同じ指導を繰り返すなど、「不十分な指導」を続けたことで、飼育環境の改善につながらなかった実態が浮かび上がる。


 県は2016年度以降、元社長が運営していた2施設に計9回の検査を実施。今回の問題を検証するため、検査を行った職員に聞き取り調査を行った。


 報告書によると、県は効率的、効果的な立ち入り検査を実施するとして抜き打ちではなく、事前に検査日を調整していた。それでも「人によっては目にしみるくらいのアンモニア臭で、職員の一人はいったん外に出なければ我慢できない状態」(2018年3月26日に検査)など劣悪な飼育状況だった。


 県は換気や排せつ物の適切な処理などを繰り返し指導したとする一方、動物愛護法による行政措置は「全国的にもほとんど事例がなく、経験の積み重ねがない状態だった。強い措置を講じることをちゅうちょしていた」とした。


 県食品・生活衛生課の吉田徹也課長は11日の県議会で「過酷な状況にあった動物の飼育環境が改善されなかったことは深刻に反省する」と述べた。今後は抜き打ちでの検査を行うほか、苦情が寄せられるなどの「指導困難事例」についてデータベース化する。