2022年2月17日 ORICON NEWS
■一人暮らし高齢者でも飼いやすいのか? 意外と知られていない、鳥の平均寿命
鳥のなかでもペットとして人気なのが、文鳥とインコだ。小鳥レスキュー会で実際に引き取るのも、近年はこの2種が多い。小さいサイズの鳥は、犬や猫と比べて世話も簡単で気軽に飼い始める高齢者も多いという。
「犬と比較して、80代の高齢者でも鳥は気軽に飼えてしまいます。『一人暮らしで寂しいから、鳥だったら水とエサを与えておけばいいだろう』と飼われる方は多くいます」(上中代表理事/以下同)
しかし実際には文鳥で8~10年、コザクラインコで8~15年ほどの平均寿命といわれている。「例えば、ジュウシマツは古い飼育本だと平均寿命3年と書かれているものもありますが、当施設で保護している子は13年生きています」
もちろん、個体差や飼育環境でも寿命はかなり変わってくるが、40~50年生きるヨウムなど犬や猫よりも平均寿命の長い種類も存在する。
「飼育されていた方が亡くなってから、その方が鳥を飼育していることが判明し、警察や親戚の方、不動産の管理人から連絡が入ることも多いです。頻度はその時によって違いますが、先週は約2件こうした連絡がありました。その子たちは健康診断後、施設で現在も保護中です」
■1羽3千円で買えるけど…「“お金”と“時間”の覚悟をもってから飼ってほしい」
インコや文鳥は、一般的にペットショップで1羽3千円程度から“安価”で買えるというのも、気軽に飼えてしまう理由の一つだろう。しかし、病気になった際には治療に数万、数十万の費用が掛かる場合もある。飼育を始める前に治療費を調べ、自分が本当にそこまで面倒を見れるのか考えることも必要だ。
「人間と同じで、鳥も年を取るとがんにもなるし、白内障、糖尿にもなります。『手術代に20万円掛かるなら、3千円で(新しく)セキセイインコを買った方が安いですね』と言った方もいました。いずれ、年をとって介護が必要になります」
「鳥に限らないですが、面倒を見切れないなら飼わないでもらいたい。そして、飼った鳥に何かしてあげられるとしたら“お金”か“時間”しかない、と覚悟をもった上で飼ってもらいたい」と飼い主が心がけるべきことについて、切実な思いを述べた。
■“巣=寝床”ではない、SNSで見かける光景に不安も 「安易に繁殖させ、手放す人がいる」
そして、SNSで見かけることも多い“巣”を巡る光景についても懸念を示す。「鳥の巣を“ベッド”だと思っている方がとても多いです。ですが鳥にとって巣(壺巣)は、“寝床”ではなく子育てするための“保育器”のような場です。用意してしまうと、メスは卵を生むようになります。産卵は体に負担が掛かる行為のため、母鳥が衰弱したり、卵を産みすぎて低カルシウム血症になったりと、死亡リスクが高まります」
文鳥などの一部の鳥は、一般家庭でも容易に繁殖する。「うちの可愛い子の子どもを見たい」という意図的なケースに加えて、飼育環境への知識不足から鳥かごに巣を用意したために、意図せず繁殖させてしまうケースが存在するという。
一般家庭で飼われる鳥は、親子や兄弟の関係性であることが多い。こうした狭い関係性で繁殖を繰り返すと血が濃くなり、奇形の雛が生まれるリスクも高まる。「片脚がない奇形で生まれた文鳥が、『止まり木に止まれないから飼育できない』と持ち込まれたケースもあります」
ほかにも鳥が日常的に巣を使うことは、健康面のリスクに繋がると指摘する。「人間の感覚で、巣で寝た方が疲れないのではないかと思う方もいますが、鳥は片脚で寝ても疲れない身体の仕組みになっています。かえって巣で寝る事で(止まり木を使う鳥に比べて)足腰が弱まるのも早まり、健康上のリスクは高まります」
一見、気軽に飼育できると勘違いされやすい鳥。しかし飼育を始める前に知識を身につけ、世話に掛かる費用と時間を真剣に考える人が増えれば、飼育途中で放棄するケースも減るだろう。だが、3千円と値付けられた命だから、お金も購入価格と同程度しか掛けられない…という考え方があるのも事実。今後、ますます飼い主の覚悟が問われるべきだ。