ロックダウン生活支えたペットたち、いまや飼育放棄続々 英・独 | トピックス

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2021年12月10日 Newsweek







──厳格なロックダウンを実施した欧州で、ペットの飼育急増と放棄が問題に。イギリスでは1年半で犬の飼育が150万頭増えたとの推算も

イギリスで大規模なロックダウン(都市封鎖)が起こると、人々は新たなパートナーを家庭に迎え、気分が落ち込みがちなステイホームの時間を明るく過ごそうと考えた。ペットブームの到来だ。


ある動物保護団体は過去18ヶ月でイギリスにおいて、約150万頭の犬が新たに飼われたとの見積りを示している。供給が追いつかず、海外から続々と仔犬が輸入されるほどの過熱をみせた。猫の人気も伸びた。英愛護団体が今年10月に実施した調査によると、猫を飼育する人の数はパンデミックを機に7%ほど増えたという。

困難な時代、ペットを迎えることで明るく過ごそうという試みは前向きではある。しかし、なかには将来を見据えず、その場限りの判断で購入した人々も多かったようだ。わずか数ヶ月後、ペット熱は一気に冷え込む。

英ガーディアン紙によると、英動物虐待防止協会には引き受けの依頼が殺到し、団体のデスクに据えられた電話は数分おきに鳴りつづけたという。状況が最も深刻だった昨年末には、1日あたり70匹ほどの動物を連日引き取っていた。

イギリス最大の動物保護機関であるドッグ・トラストの犬舎はすでに満杯となり、登録済の里親たちもこれ以上は引き受けられない状況だ。だが、「おそらくピークはこれからでしょう」と同施設の専門家はみる。

イギリスだけでなく、同じ欧州のドイツでも似たような傾向が報告されている。国営放送のドイチェ・ヴェレによると、2019年から2020年までに飼い猫の数は100万匹増加した。犬も60万匹増となっている。オークションサイトのeBayでは違法な仔犬の取引が後を絶たなかった。

複数の保護団体が衝動的にペットを飼わないよう呼びかけたが、聞き耳を立てた人々は少なかったようだ。数ヶ月経ったいま、飼育に手を焼く人が目立ちはじめ、放棄するケースが相次いでいる。西部のある街では65歳の女性が、高さ2メートルのフェンス越しに保護団体の敷地内へと犬を投げ入れ、衝撃的なニュースとして報じられた。

■ パンデミックの特需が招いた、ペットのしつけ不足

多くのペットが手放されている背景には、パンデミック固有の事情がある。こと、本来正しくしつければ良好な関係を育むことができるはずの犬について、問題行動に手を焼く例が目立っている。

ガーディアン紙が指摘するのは、繁殖・流通上のストレス問題だ。前述のように需要に対応するため、多くの仔犬が海外から急きょ輸入された。イギリスの動物虐待防止協会の職員は同紙に対し、「こうした仔犬たちは、動物愛護よりも量産に重きを置いた施設と環境で繁殖されています」と説明する。

幼くして母親から引き離され、さらに長い時間をかけてイギリスまで輸送されることでストレスが蓄積し、将来的に問題行動を起こす可能性が増すのだという。

また、ロックダウン中に適度な外出ができなかったことから、犬同士で社会性を育むことができなかったことも災いした。仔犬の時期にほかの動物や大きな音に慣れる機会がなかったことも、過剰反応を示す傾向を招いている。

ドイツでは、他人を噛むなど飼い犬の問題行動に耐えられなくなった人々からの相談が、飼育施設のもとに殺到している。ケルン南部に位置するある保護施設の代表は、相談の電話が通常の5倍のペースで鳴っていると訴える。

飼い主たちがブームのさなか購入した仔犬たちは、現在いっせいに思春期に差しかかっている。苦労してしつけを終えたはずが、再び指示を聞かなくなるケースが軒並み増えているという。保護施設の代表はドイチェ・ヴェレに対し、飼い主たち全員の忍耐力が高いわけではないと指摘する。「一度問題となれば、その動物に二度目のチャンスを与える人は限られています。」

犬以外に目を向けると、猫や小動物などのペットについては、必ずしもしつけ問題が原因で手放されているわけではないようだ。ただし、やはりコロナ禍の影響はある。飼い主の収入が不安定となることで餌代を捻出できなくなり、飼育を途中で諦めるケースが少なくない。

■ 保護施設は奔走 マッチングアプリで里親探しも

ドイツの一部地域では、居場所を失った犬や猫などの里親探しに、デートアプリのTinderが活躍している。通常は人間同士が使うこのマッチングアプリに、ドイツ・ミュンヘンの動物保護団体は計14匹の犬と猫のプロファイルを登録した。

通常は相手候補のユーザーたちの写真が表示されるが、この取り組みによって人間に混じり、犬と猫の写真が表示される。興味を持ったユーザーがいずれかの動物とマッチングすると、ペットのアカウントを実際に管理している保護団体の職員とチャットができるしくみだ。

プロファイルの文章はユーモラスだ。パリと名付けられたある犬のプロファイルには、「一目惚れできるといいけれど。一夜限りの関係は望まない。知性と忠誠心があります。車に乗るのが好きで、前は少しだけギリシャに住んでいました」と、まるで人間のように略歴を語っている。

アイデアはミュンヘンの広告代理店が考案したものだ。愛情をもって引き受けてくれる新たな飼い主を探す妙案かと思われが、実は試みはすぐに壁に突き当たった。アプリのAIが人間でないことを見抜き、アカウントがブロックされてしまったのだ。広告としての利用はそもそも、規約で禁止されている。

しかし保護団体がTinderに状況を説明すると、同社は理解を示した。ブロックを解除し、里親探しの広告配信までオファーしたという。保護団体はウサギ、鳥、キツネなど、1000匹以上の動物に居場所を提供するシェルターとなっている。興味を持ってアプリでマッチングした人々は実際に飼育場所を訪れ、他の動物たちとも対面し、気に入れば新たなパートナーとして迎え入れることができる。

保護団体職員はドイチェ・ヴェレに対し、「私たちはまたこのキャンペーンを通じ、棄てられた動物たちに関心を持ってもらいたいのです」と語っている。

独創的な取り組みにより新たなパートナーを見つける動物が出始めている一方、ペットシェルターの収容能力は依然として限界に近い。一度は見放された命を救うべく、動物保護団体の模索はつづく。