2021年9月28日 讀賣新聞
新型コロナウイルス禍で在宅時間が増える中で、癒やしを求めて飼い始めたペットを放棄するケースが後を絶たない。「ほえるから」「仕事が忙しくなった」といった理由で、犬猫の保護団体に預けられるケースが増えている。団体側は「自宅にいる時間が長くなったから飼育を始めたのに、働き方が変わったとして捨てる人もいる。みとるまで面倒をみる覚悟を持ってほしい」と訴えている。(水戸部絵美)
緊急事態宣言後に急増
23日昼、NPO法人「みなしご救援隊 犬猫譲渡センター東京支部」が運営する保護犬・保護猫カフェ(東京都世田谷区)で、ロングコートチワワの「クマ」(1歳)が、家族連れの膝の上で頭をなでられ、穏やかな表情を浮かべていた。
クマは昨年5月、生後2~3か月のときに同支部に持ち込まれ、保護された。元の飼い主からは、約1週間で「犬の気持ちがわからなかった」という理由で見捨てられたが、現在はカフェの「看板犬」として訪れる人にかわいがられている。
同支部が保護した子犬などは、コロナ感染拡大前は2、3か月に1匹程度だったが、今年に入って約20匹に上った。初めて緊急事態宣言が出された直後の昨年5~6月には、月に8匹が保護された。
「売り手にも問題」
同支部は、飼育放棄の背景には、ペットの売り手側にも問題があると考えている。ペットショップで「散歩はいらない」「ほえない」などと説明されて購入したが、現実とのギャップに悩んで預けられるケースも目立つという。
同支部では、保護した犬猫の新しい飼い主も募集している。生後3か月半のフレンチブルドッグ「もじー」は現在、約40組の申し込みがある。カフェには、引き取りを希望する多くの家族連れが訪れ、支部スタッフとの面談は1日20組に上ることもある。動物アレルギーの検査を受けたか、結婚したり転職したりしても飼い続けることができるかなどチェックした上で引き渡すことにしている。
同NPOの佐々木博文理事長は「癒やしを求める人には、世話が大変な子犬よりも、成犬の方が向いていることもある。ペットショップだけでなく、保護された犬猫を迎えるという選択肢もあることを知ってもらいたい」と語る。
新規飼育数 5年で最多…昨年10月時点
新型コロナの感染拡大による外出自粛の影響で、ペットを飼い始める人は増えている。一般社団法人「ペットフード協会」(千代田区)の調査によると、近年の犬の飼育数は減少傾向、猫は横ばいだった。しかし、昨年10月時点で、1年以内に新たに飼育された犬は前年比14%増の約46万2000匹、猫は16%増の48万3000匹と推計され、いずれも過去5年間で最も多かった。
ペット保険大手の「アニコムホールディングス」(新宿区)によると、ペットが病気になった際に治療費を補償するなどのペット保険の新規契約数は、今年4~6月、前年同期比13・6%増の6万730件で、四半期ベースで過去最多となった。家にいる時間が延びたことをきっかけに、初めてペットを飼い始めた新規契約者が多かったという。
一方で、動物の命を守る愛護団体も増えている。環境省によると、動物の譲り渡しなどをしている全国の団体は、2020年4月時点で963団体あり、5年前と比べて約3倍となっている。