動物愛護団体の飼育数制限へ 行き場失う犬猫増懸念 | トピックス

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2020年11月7日 日本経済新聞








犬猫を扱う繁殖業者やペットショップの飼育数や管理方法などを規制する数値基準が来年6月から初めて導入される。一部業者の劣悪飼育防止を目的に、環境省の審議会が検討を進めているが、規制対象には殺処分防止に取り組む動物愛護団体も含まれ、行き場を失う犬猫の増加が懸念されている。

「ボランティアの確保に猫の世話。いつもぎりぎりで回している状態」。札幌市の一般社団法人「ねこたまご」の後藤志帆代表はため息をつく。昨年度は札幌市の収容施設を通じ約190匹の子猫を引き取り、譲渡先を探した。

病気や障害のある猫の世話もするが、医療費は不定期の寄付金が頼みだ。無秩序な飼い方による大量繁殖で飼育不能に陥る「多頭飼育崩壊」となった猫たちの保護依頼が市から舞い込むと、限られた人員や飼育スペースは逼迫度を増す。

多数の犬猫を狭いケージで飼う一部業者の悪質行為が横行するなど深刻化する動物虐待を背景に、改正動物愛護法が昨年成立した。飼育管理の数値基準を省令で定めることになった。

ケージの広さや交配可能年齢などと並ぶ柱の一つが飼育数制限で、従業員1人当たりの上限を繁殖用の犬は15匹まで、猫は25匹までとする方針。愛護団体にも適用され、扱える数は職員1人につき犬20匹、猫30匹までとなる見込みだ。

愛護団体の中にも過度な受け入れで劣悪飼育となっているケースが散見されるとして、後藤代表は「基準導入自体は改善への第一歩」と評価する。ただ、飼育数制限は「引受先が見つからない犬猫の増加につながりかねない」とも指摘する。

新たな規制で存続が厳しくなる業者や愛護団体も予想される。犬猫たちはどうなるのか。

保護犬・猫のマッチングサイトを運営する「シロップ」(東京)などは9月、28愛護団体を調査した。今後の懸念を複数回答で尋ねると「繁殖業者からのレスキュー頻発による保護活動の負荷」が12団体で、「業者廃業による保護犬や猫の殺処分増加」も11団体に上った。「収容数を増やす」とした団体は無かった。

殺処分減を政策目標に掲げる環境省は、飼育数制限に伴う保護犬や猫の対応について「国や自治体、業者と連携し譲渡を促す環境整備を進める」と強調する。制限に経過措置を設けることも検討課題とするが、連携の在り方など具体案は示していない。

動物愛護行政の現場を担う自治体側も「対応は国の方針を聞いて検討する」(東京都)との意見が多い。岐阜市のNPO法人「人と動物の共生センター」の奥田順之理事長は「受け入れ議論が進んでいないのは問題だ。近年、大きく減った殺処分を増やさぬよう業者や愛護団体、自治体が知恵を持ち寄る場を早く設置すべきだ。国は態勢づくりを主導してほしい」と話している。

〔共同〕