広島県で「絶滅」とされたニホンリスを確認 庄原市で死骸見つかる | トピックス

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2021年1月21日 中國新聞デジタル





 広島県内で生息の確認がなく「絶滅」とされてきたニホンリスが、庄原市北部の西城町で見つかった。発見時は既に死骸だったが損傷が少なく、同市の比和自然科学博物館(比和町)が剥製にした。近年は同県東部でも目撃情報や写真撮影の報告があり、専門家は「県内での生息を裏付ける貴重な標本」とする。


 ニホンリスは日本固有種で、背面は赤褐色、腹部は白いのが主な特徴。分布は本州、四国、九州、淡路島とされる。岡山、鳥取県の一部で生息記録があるものの、広島県内では生息を裏付ける標本や有力な情報がなかった。このため「レッドデータブックひろしま2011」は「絶滅」と記している。

 昨年9月下旬、庄原市西城町の民生児童委員長尾充久さん(70)が町内の市道で死骸を発見した。鳥取や島根県境に近く針葉樹が多い山林地帯。体長18センチ、尾を含めた全長37センチの雌で、外傷はなかったが頭骨の粉砕骨折があった。車に接触した可能性がある。

 知らせを受けた同博物館インストラクター原田樹雄さん(63)が、すぐに同館に持ち込むよう長尾さんに依頼。原田さんは図鑑と照合し、体の色の特徴からニホンリスと結論付けた。学術誌「比婆科学」への論文掲載に向けて準備を進める。「最初は半信半疑。死骸を早く回収できてよかった」と振り返り、「空白地帯の比婆山連峰で実物が見つかったのは大きい」と話す。

 一方、同レッドデータブック改訂に向けたニホンリスの生息調査に携わる安佐動物公園(広島市安佐北区)職員畑瀬淳さん(56)たちのグループは昨年1~3月、福山市内の山林で自動撮影カメラでの写真撮影に成功。ニホンリスがかじったとみられる松ぼっくりの跡も発見した。畑瀬さん自身も昨年秋、広島県神石高原町内で見つかった死骸を入手している。

 畑瀬さんは「林道整備などの開発に伴い、日当たりのよい環境を好むアカマツが生え、餌の松ぼっくりが多い環境になっているのでは」と推測。中国山地の近隣の生息域から広島県内へ分布が広がっている可能性を指摘する。

 比和自然科学博物館は3月8日まで、原田さんの研究報告と剥製を展示している。