19年も暮らした老犬を残していけない…必死に一人暮らしを続けた高齢女性 | トピックス

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2020年12月7日 yomiDr.






ペットと暮らせる特養から 若山三千彦

7歳の愛猫と一緒に入居 笑顔が増えた女性

ペットと暮らせる有料老人ホームから入居した例も

有料ホームやサ高住はペットとの入居を認めて

超高齢の愛犬と一緒に県外から入居

 先月には、愛犬との同伴入居もありました。岡部良枝さん(仮名)が、ヨークシャーテリアとチワワのミックス犬(ヨーチワと呼ぶこともあるそうです)のサリーちゃんと一緒に入居したのです(写真)。サリーちゃんは、なんと19歳。いえ、19歳の終わりで、もうすぐ20歳になります。犬としては超高齢です。人間なら100歳に匹敵します。 岡部さんは一人で暮らすのが無理な状態になりながら、サリーちゃんを残してはいけないと必死に一人暮らしを続けていました。実は岡部さんは、さくらの里山科の地元の横須賀市どころか、神奈川県在住ですらなく、遠方から、わずかな望みを託して、さくらの里山科に申し込まれたのです。コロナ過のため、私達もうかつに県外に赴くわけにもいかず、お申し込みいただきながらもお応えできず、岡部さんの状態とサリーちゃんの年齢を考えると、時間のゆとりがないのでやきもきしていました。 秋になり、一時的にコロナの感染が減少した時を狙って、ホームの相談員と看護師と犬ユニットの介護リーダーが、片道4時間かけて日帰りで調査訪問を決行しました。短時間でご本人の状態の調査と、サリーちゃんのチェックを終え、入居の段取りを固めました。そして、ホームでは即座に入居判定会を開き、緊急入居を認めました。 岡部さんとはかなり離れたところで暮らしている息子さんも即座に動いて下さり、先月、無事、サリーちゃんと一緒に入居できました。間一髪のところでした。もう少し遅れていたら、再びコロナの感染者数が増加したので、県外からの入居はお断りしなければいけないところでした。 19歳のサリーちゃんを手放して老人ホームに入居したら、岡部さんはどれほどつらかったことでしょう。19年も一緒に暮らしていた飼い主さんに捨てられたら、サリーちゃんはどんなに悲しかったことでしょう。岡部さんとサリーちゃんが、これからも一緒に暮らせる。この一点だけでも、私達がペットと一緒に暮らせる試みを始めた価値があると思っています。

ホームの飼い猫になった超高齢の「お母さん」大往生

若山三千彦(わかやま・みちひこ)

 社会福祉法人「心の会」理事長、特別養護老人ホーム「さくらの里 山科」(神奈川県横須賀市)施設長 1965年、神奈川県生まれ。横浜国立大教育学部卒。筑波大学大学院修了。世界で初めてクローンマウスを実現した実弟・若山照彦を描いたノンフィクション「リアル・クローン」(2000年、小学館)で第6回小学館ノンフィクション大賞・優秀賞を受賞。学校教員を退職後、社会福祉法人「心の会」創立。2012年に設立した「さくらの里 山科」は日本で唯一、ペットの犬や猫と暮らせる特別養護老人ホームとして全国から注目されている。20年6月、著書「看取(みと)り犬(いぬ)・文福(ぶんぷく) 人の命に寄り添う奇跡のペット物語」(宝島社、1300円税別)が出版された。