行き場のない動物を救い30年、80歳の夢 | トピックス

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2020年12月7日 alterna







「保護した動物たちが、愛情を受けて幸せに生きられるように」。そんな思いで1990年から30年にわたり動物を保護し、里親に譲渡する活動を続けてきた団体があります。保護の傍ら、動物たちをもっと広々とした安心できる場所で世話したいと、12年前からは 兵庫・丹波篠山にある広大な敷地でシェルターを建設中です。25歳で英語教師として来日、今年80歳を迎えた代表の思いとは。(JAMMIN=山本めぐみ)

行き場を失った犬や猫を保護


認定NPO法人「アニマルレフュージ関西(ARK、以下『アーク』)」は、行き場を失った犬や猫を保護・譲渡する活動をして今年で30周年を迎えます。大阪の2拠点に約100頭、東京の一時預かりボランティアさんの元に約10頭の動物を保護しており、その世話や譲渡活動の傍ら、2008年より兵庫・丹波篠山の7000坪にも及ぶ広大な敷地「篠山アーク」で、動物たちが安心して暮らせるシェルターの完成を目指しています。「まだ、描いた構想の途中段階」と話すのは代表のエリザベス・オリバーさん(79)。
「最近の活動の大きなところでは、ニュースでも大きく報道された島根県出雲市の多頭飼育崩壊現場から犬を保護できないかと他の団体さんとも協力しながら動いています。この現場に限らず、これまでにたくさんの多頭飼育の現場へ足を運びましたし、行き場を失った動物を保護してきました。しかし私も80歳を目前に、昔のように思いたったらすぐどこへでも出かけるということは少し難しくなりました。すべての現場に行くことも、そこにいるすべての動物を保護することも難しい中で、スタッフのサポートなしにはなかなか難しいと感じることも少なくありません」「篠山アークには現在までに2棟の犬舎が建ちました。しかしまだまだ構想の途中です。犬だけでなく猫のためのシェルターや来てくださるボランティアさんが寝泊りできる施設、獣医さんの部屋も作りたいと考えていますし、そのための広い場所もありますが、工事費の工面が難しく、完成までにはまだ時間がかかりそうです」

「ペットにとって、家庭がいちばん」

日本ではまだまだ知られていない、 動物への「虐待」

アークは、オリバーさんの出身であるイギリスの最大の犬の保護団体「Dogs Trust」から認定を受けて支援を受けるなど、動物愛護の分野において世界水準での活動が一つの特徴です。「動物福祉の大きな国際会議に毎回参加してきました」とオリバーさん。「この会議には、50以上の国からものすごくたくさんの方が訪れて、シェルターのこと、動物の行動学や病気のことなど、世界中から集まる登壇者から最新の情報を得ることができます。同時に、各国で活動する人とコンタクトを取り、それぞれの国の動物福祉のレベルや状況について情報交換する良い機会になっています」

「家族に愛され、幸せそうにしている姿を見るのが 本当に嬉しい」

これまでに6200頭を超える動物たちを譲渡してきたアーク。譲渡の際に大切にしているのは、「飼い主さんとの相性」だといいます。「譲渡は本当に結婚と同じで、うまくマッチングするかどうか、飼い主を希望される方と面接しながら進めます。たとえば、お父さんとお母さん、お子さんの3人で『犬を引き取りたい』と来られることがあります。日中、お父さんとお母さんは仕事、子どもは学校で家にいない。では誰が犬のお世話をするのかと尋ねると『おばあちゃん』と。そうすると私がいちばん会いたいのは、そのおばあちゃんなんです。ご家庭によってそれぞれ雰囲気がありますから、その辺を見極めながら、動物の性質や性格とうまくマッチングすることが大切だと思っています」「まずはここにいる動物たちが、そして譲渡先で彼らが幸せに生きられていること。それが何よりも大切です。毎年同窓会を開催してきましたが、その時に飼い主さんにたくさん愛情を注いでもらって幸せそうな仔たちの姿を見るのは、本当にすごく嬉しいですね」

母から教えられた「責任」

25歳で英語教師として来日し、最初は一人で野良犬や猫の保護していたことから始まって、多い時は30頭と一緒に暮らしていたというオリバーさん。給料は、動物たちの飼育や医療費に消えたといいます。1990年、50歳でアークを立ち上げ、1995年の阪神淡路大震災、2011年の東日本大震災では被災して飼い主と離れ離れになった動物を多く受け入れました。「30年の中でも大きな出来事だった」と当時を振り返るオリバーさん。80歳になろうとしている今、活動を続けてこられたその「原動力」を尋ねました。「私は幼い頃、動物を飼う『責任』を母から教えられました。3歳半で初めて馬に乗ってから、『自分の馬が欲しい』とずっと言っていたそうです。母親は『”責任”がわかるようになれば、馬を飼っても良い』と言ってくれて、7歳で初めてポニーを飼いました。そこから、私のお小遣いはすべて馬の餌代になったし、学校から帰ってきて、どんなにお腹が減っていても友達と遊びたくても、まずはその仔に餌をあげることが優先になりました。今でも、自分よりも先にペットにご飯をあげる習慣は体に染みついています」
「馬のお腹にガスが溜まって調子が悪かった時は、夜、ガスが抜けて元気になるまで一緒に何キロも歩きました。いろんなことがあったけれど、本当に良い勉強になりましたし、『責任とは何か』を、身をもって学ぶことができました。そうやって学んできたことを、日本に来てからもずっと実践してきただけです。アークを始めた時はまさか30年もやるとは思っていなかったけれど、本当に年月が経つのは早いですね」「動ける限りは、この活動を続けたいと思っています。『サンクチュアリ』と名付けた篠山アークも、まだ完成には至っていません。規模を大きくして、ここを通じて幸せになれるいのち、年老いても安心し、落ち着いて過ごすことができる場を増やしていきたいと思っています。また、思いを継ぐ若い人たちが育っていってくれたら嬉しいですね」