2017年08月18日 くまにちコム
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5月以降、犬パルボウイルス感染症が断続的に発生している県動物愛護センター=15日、熊本市
犬や猫の殺処分施設から、保護の拠点へ改革中の県動物愛護センター(熊本市東区)が、犬の感染症対策に追われている。「殺処分ゼロを目指す」方針を掲げたことで収容頭数が急増し、犬舎は過密状態。そんな中で5月以降、感染症が断続的に発生し、多くの犬を殺処分せざるを得なかったという。「救える命があったのでは」。担当者は苦悩する。
今月14日、センターに収容中の雄犬2匹が死亡しているのが見つかった。検査の結果、犬パルボウイルス感染症と確認。今年3度目の発生だった。
同ウイルスは感染力が強く、発症すると下痢や嘔吐[おうと]を起こして成犬でも死ぬことがある。センターは感染拡大を防ぐため、2匹と同じ犬舎にいた雄13匹も殺処分。5月以降、計約40匹を「安楽死」させた。センター外にまん延しないよう譲渡会も開けない状態が続く。
センターの14日時点の収容頭数は犬83匹、猫17匹。殺処分が通常業務だった2015年度までは、犬の収容頭数は最大20匹程度で現在は明らかにスペース不足だ。感染症が疑われる犬を隔離する施設もない。
加えて、県内10保健所で保護された犬は7割が保健所段階で譲渡されるか飼い主に返還される。センターに送られてくるのは、譲渡に向けて専門的な訓練が必要だったり、健康状態が悪かったりする犬だ。センターは16年度以降、職員を6人から14人に増員し、ボランティアの助けも借りて対応しているが、人手が足りていないという。
県健康危機管理課の担当者は「殺処分ゼロを目指すのは大事なことだが、センターの態勢が追いつかない。犬舎が過密にならず、感染症が発生しなければ殺さずに済んだかもしれない、と考えると悩ましい」と明かす。
同ウイルス感染症は11年、殺処分ゼロを目指していた熊本市動物愛護センターでも集団発生し、市は対応に苦慮した。県は今回、可能な限りワクチン接種や消毒で対応しつつ、隔離施設の整備など中長期的な対策も検討していくという。(太路秀紀)