2017年6月8日 日本海新聞 Net Nihonkai
鳥取大が医学と獣医学、染色体工学の連携で設立したベンチャー企業「PACT」(米子市西町)は、イヌをはじめとするペット(コンパニオン)動物のがん治療用抗体医薬品を開発している。同大学染色体工学研究センターが開発した完全ヒト抗体生産ラットを応用。ヒトの新薬開発にも貢献する取り組みとして期待が寄せられている。
ペット動物のがん治療薬開発を進める香月准教授=米子市西町のとっとりバイオフロンティア
同センターが完全ヒト抗体ラットを使って作製したがん抗体を活用し、ヒトの治療用抗体をイヌ化してペット動物のがん治療用の医薬品を開発する。イヌの死因の1位はがんで、ペットは家族という考えの高まりから近年、高度な治療を受けさせたいという飼い主が増加している。
また、農学部共同獣医学科の全国の動物病院とのネットワークを生かして自然発症がんの動物のデータベースを構築し、新薬開発の臨床研究を支援。イヌやネコは自然発症がんが多く人と似ていることから、動物レベルの検証が必要とされるヒトの新薬開発に役割を果たすことが期待される。
同社は2月、とっとりバイオフロンティア内に設立。代表を務める同センターの香月康宏准教授は「創薬シーズを作り出し、動物用医薬品会社への供与を目指したい。動物治療の拠点として認知されれば、国内外からペットを連れた飼い主が長期間滞在するなどの波及効果も見込まれる」と話している。(渡部ちぐみ)