毎日新聞
不妊去勢手術が施されたことを示す耳の切り込みがある猫=長崎市夫婦川町で2017年4月5日、今野悠貴撮影
2015年度に長崎県内で殺処分された犬と猫は計4370匹で、2年連続で全国最多となった。要因の一つは野良猫の多さ。温暖な気候などを背景に子猫が次々と生まれ、不幸な形で生涯を閉じる。野良猫の繁殖を抑えようと、県や長崎市は猫の不妊や去勢の手術に補助するなどの取り組みを本格化させている。【今野悠貴】
保健所などに持ち込まれた犬や猫は一定期間内に引き取り手が見つからなければ、県の動物管理所(大村市)や長崎、佐世保両市の動物管理センターなどで殺処分される。
15年度の殺処分数は犬785匹、猫3585匹。10年前の05年度(計1万4947匹)に比べれば、3分の1になったが、総数は全国一だ。大半は野良猫。県生活衛生課によると、長崎は気候が温暖で子猫が冬を越しやすい。斜面地にある長崎、佐世保両市の市街地では外敵から隠れる場所も多く、餌を与える市民もいる。同課は「子猫が生き延びやすい環境がある」とする。
雌猫は一度に8匹もの子猫を産むことがあり、妊娠期間も短い。環境省の試算によると、1匹が3年後には2000匹超になる。特に春は野良猫の出産がピークで、県内の保健所などには大量の子猫が持ち込まれる。
行政も手をこまねいているわけではない。犬や猫の譲渡を促進しようと、県は08年から保健所に収容された犬や猫の情報を掲載するホームページ「ながさき犬猫ネット」を開設。15年度からは、動物愛護団体などが保護した野良猫の不妊・去勢手術に対し、県が年間40匹分、長崎市が年間250匹分の費用を補助する。しかし、県内で動物保護活動に取り組む「Life of Animal」の木村愛子代表は「殺処分数は減ったが、まだ対策は十分ではない」と話す。
こうした声を受け、県は今年度から取り組みを強化する。3カ年計画の「不幸な犬や猫を減らす協働プロジェクト」として、毎年度約400万円の予算を計上。野良猫の不妊・去勢手術への補助を年間200匹に拡充し、収容された犬や猫の譲渡会を隔月で開く。県生活衛生課は「19年度には殺処分数を半数に減らしたい」とする。
県動物管理所には1月、8畳ほどの広さの「ふれあいルーム」ができた。「ながさき犬猫ネット」を見て訪れた人がお目当ての犬や猫と触れ合える。1~3月に前年同期比で8件増の63件の譲渡が成立した。
ふれあいルームの壁に掛かった「幸せ便り」と書かれたコルクボードには、引き取られた犬や猫の写真が飾られている。管理所の職員は「一匹でも多く譲渡が成立して第二の人生を幸せに送ってほしい」と話す。