朝日新聞デジタル 3/18(土) 11:11配信
7日に国立公園に指定された鹿児島県・
奄美大島で、ネコが森に入ってアマミノク
ロウサギなどの固有種を襲う被害が相次
いでいる。貴重な生態系が壊れ、来年夏
の登録を目指す世界自然遺産の審査に
も影響が出かねない。ネコを捨てたり放し
飼いにしたり、人間の無責任な行動によ
る被害は全国各地で起きており、どこも
対応に困っている。
【写真】国の天然記念物オーストンオオアカゲラをくわえたネコ(2014年6月7日、鹿児島県龍郷町、環境省提供)
2月下旬深夜、奄美大島中部の林道脇の
草むらで、ライトに照らされた黒ネコの目が
きらりと光った。ネコは人の気配に気づくと
、森の中に消えていった。その前後には奄
美大島と徳之島だけにすむ国の特別天然
記念物、アマミノクロウサギが12匹現れた
。うち1匹は脚をけがして引きずるように歩
いていた。
黒ネコは人が放したものか、その子孫と
みられる。環境省の推計では、奄美大島
全体で野ネコは600~1200匹、徳之島
は150~200匹いるとみられる。同省が
2008年、クロウサギをくわえたネコを初
めて撮影した。
奄美野生動物研究所の塩野崎和美研究員
が野ネコのフンを調べたところ、クロウサギや
ケナガネズミ、アマミトゲネズミといった希少
哺乳類を好んで食べていた。両島には本来、
敵となる肉食獣がいない。塩野崎さんは「島
在来のハブは警戒しても、ネコから逃げる術
は持たず、狙われやすいのではないか」と話
す。
奄美大島では1979年、ハブなどを駆
除するためにマングースが放たれ、希少動
物が激減。20億円以上かけてわなをしか
けてマングースを捕殺した。クロウサギの
目撃地域は03年ごろ以降、徐々に広がっ
てきた。それが今度はネコの脅威にさらさ
れている。
ネコが襲う現場を目にした、自然写真家
の常田守さん(63)は「島から固有種の姿
が消えることはすなわち絶滅を意味する。
早く手を打たないといけない」と話す。