産経新聞 2/3(金) 14:52配信
1匹ずつおはらいが行われた=大阪市中央区
かわいいペットの無病息災を願いたいと
する飼い主の思いに応えようと、ペット
向けの祈祷(きとう)を行う神社が
増えている。
神道にはイヌなどの動物は「不浄」と
いう考え方もあるが「ペットは家族の
一員」とする認識が定着したことに
よる“新文化”ともいえ、専門家は
「日本人らしい発想で、時代の流れと
して自然だ」としている。(藤井沙織)
拝殿前にイヌやネコを抱いた参拝者が
集まり、宮司が飼い主とペットの健康を
祈る。
大阪市中央区の少彦名(すくなひこな)
神社で1月13、14の両日行われた
「ペットと一緒に初詣」(初穂料6千円)。
5回目の今回は約15組が参加し、
老犬を連れた女性(46)は
「大事な家族だからやっぱり神様に
すがりたい」と話した。
病気平癒と健康成就という同神社の
神徳にあやかろうと、数年前から
「ペットの病気が治るよう祈祷して
ほしい」という問い合わせが増加。
別所賢一宮司(44)は「大きな手術を
控えたケースもあり飼い主は真剣だ」と
話す。
しかし、祭りの前に神職が肉を断つ
習わしがある兵庫県のある神社では
「決まり事として清浄な境内に動物を
入れてはいけない」とペット同伴を
断る看板を立てているように、神社側に
動物を不浄とする考え方は根強く、
別所宮司も「賛否はあると思う」と語る。
一方で、動物が神や神の使いである
ほか、安産祈願ではイヌにあやかる
こともあり、全国約8万の神社を
包括する神社本庁は「神道に統一的な
教義はなく一概には示せない。
神社によって考えは異なる」としており、
曖昧な部分も多い。
実際にペットを受け入れる神社は
少彦名神社以外にも全国にあり、
神奈川県の座間神社ではペット専用の
「伊奴寝子(いぬねこ)社」を建て、
祈祷も行うほか、京都市上京区の
晴明神社は宮司が祈祷したお守りを
送付する「通信制」の健康祈願を実施。
宮司らは「ペットに対する人の思いに
応えるのが大事だ」と口をそろえる。
ペット祈祷が増える現状について、
近畿大総合社会学部の清島秀樹教授
(現代文化論)は「人間とそれ以外の
存在の間に明確な線を引かない、とても
日本人らしい発想だ」と指摘する。
日本には、古くから針供養や
はさみ供養など人間以外の“モノ”を
供養する文化があり、清島教授は
「日本人には物でさえ仕事や生活の
パートナーと捉える観念がある。
ペットの健康を祈りたいという人間の
思いに神社が応えるのは自然な流れ。
不浄の認識が薄れ、ペットに対する
日本独特の考え方がようやく顕在化
してきた」と捉えている。