モデル浜島直子さん 命救った保護犬が今では「ほっとさせてくれる家族」 | トピックス

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sippo 1/5(木) 11:10配信

 2010年6月、ピピは東京都武蔵村山市内を
母犬にぴったりと寄り添いながら、
もう1匹の兄妹犬と一緒に歩いていた。

保健所に保護されたとき、母犬の体には
繰り返し出産させられた痕跡が色濃く
残っていた。
生後6カ月くらいと見られるピピたち
2匹の子犬は、イタズラされたのか、
首から下の被毛がバリカンのようなもので
刈られていた。

殺処分が翌日に迫ったある日、3匹は
動物愛護団体に救い出された。

モデルの浜島直子さんは偶然、
その団体の譲渡会場を訪れ、
ピピに出会った。

浜島さんは当時、
クリサジークという犬種を飼いたくて
2年前からブリーダーに予約をしており、
もう間もなく子犬が家にやってくると
いうタイミングだった。

予約していた犬を断って

 それでも、動物愛護団体のボランティアから
ピピの境遇を聞き、そのぬくもりに
接してみて、ピピを引き取る決断をした。

クリサジークのブリーダーにキャンセルの
連絡をすると
「ありがとう。あなたのその縁をすごく
うれしく思います」という言葉が返ってきた。
そのブリーダーも、保護犬に関する活動を
していたのだ。

浜島さんはこう振り返る。

「私がクリサジークにこだわっていなければ、
2年も待つことなく、すぐにほかの犬種を
飼っていたと思う。

もしそうしていたら、
うちのマンションは1匹までしか飼えない
決まりだから、ピピちゃんと出会っても
引き取ることができなかった。

ピピちゃんとは、深い縁で結ばれているんです」

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浜島直子さんとピピ

 引き取った直後のピピはとにかく
人間を恐れる犬だった。浜島さんが
フードを入れた器に触ろうとすると、
食べ終わっていてもうなり、
かみつこうとした。

浜島さんは人間の手は「敵」ではないことを
伝えようと、ピピの頭をなでながら、
一口ずつ手のひらからフードを
あげるようになった。

仕事の時も、犬を同行できる現場であれば
なるべく一緒に連れて行った。

さまざまな人と触れ合わせて、人間は
優しい存在であることを教えてあげたかった。
すると次第に、人間への恐怖心が払拭
(ふっしょく)されていった。

フードを食べるときも、うならなくなった。

ピピが一番上の子ども

 ピピはトイレシートの意味も知らなかった。
トイレシートで排泄(はいせつ)をすることは
知っているが、なぜかその上で寝てしまうのだ。

しかも時に、自分の糞を食べてしまうことも
あった。

 浜島さんは、軟らかい犬用ベッドを購入し、
そこでピピを優しくなでてあげるということを、
1カ月ほど続けた。

そうしてようやく、トイレシートの上で
寝ることがなくなった。

「純血種であるシー・ズーが、繰り返し
出産させられた母犬と一緒に放浪していた
状況を見ても、繁殖業者が遺棄した
子たちであることは明らかでした。

最初は人間が何をしても無反応だったり、
そうかと思うと突然うなったり……。

人間に優しくされた経験がなかったのだと
思います。トイレシートの上で寝ようと
するのも、おそらくそういう環境で
ずっと飼われていたんでしょうね」


ピピと暮らし始めて5年目、
14年10月に浜島さんは長男を出産した。

2人と1匹の生活に、赤ん坊が加わった。

浜島さんは妊娠中から「ピピちゃんが
一番上の子どもだよ」と毎日何度も
伝え続けた。

長男が初めて家に来た日、
さっそくピピと対面させてみた。

長男をリビングに寝かせると、ピピは
全身のにおいをくまなく嗅ぎ、
しばらくすると50センチくらいの距離を
置いて長男の横で寝始めた。

「それまではピピちゃんを子どもの
ように思って、ベタベタとかわいがって
いたんです。

でも長男が生まれて家にやってきたときから、
ピピちゃんは私の心のつっかえ棒みたいな
存在になりました。

育児や仕事でどんなに忙しくしていても、
ピピちゃんは私をほっとさせてくれるんです。

ピピちゃんにしてみれば、
『我が家のアイドル』という地位を失って
寂しさはあるのかもしれないけど、
これが新しい私たち家族の形なんだなって
思っています」

ピピは長男の面倒を見るのが得意だ。
たとえば浜島さんが洗濯をしているとき、
長男がぐずったりウンチをしたりすると、
ピピがトコトコとやってくる。

じっと浜島さんを見つめ、ときおり寝室の
ほうに目をやる。その動作で長男の異常を
知らせてくれるのだ。

また、浜島さんが長男を叱ると、ピピは
素早くやってきて、長男と浜島さんの間に
お座りをする。

「ピピちゃんが息子をかばうみたいに
するんです。それで私もばからしくなって、
叱るのをやめる(笑)。

出産前は、赤ちゃんにかみついたりしたら
どうしようという恐怖心がありましたが、
全く心配いりませんでした」

sippo(朝日新聞社)