SUUMOジャーナル
2016年10月20日 07時00分
(2016年10月24日 13時11分 更新)
防災月間の9月は、全国各地で防災訓練
などのイベントが実施された。
そんななかで近年関心が高まっているのは
“ペット同行避難”。子どもの数より
犬猫ペットの数が多い時代、
「いざ被災したときに、この子はどうなるのか?」
と不安を感じている飼い主も多いはず。
その一人でもある筆者が、人と動物の
防災を調査研究し、被災地の現状を
知るNPO代表にお話を伺ってきた。
ペットとの同行避難を推進する自治体が
増加
東京港区に本部を置く特定非営利活動法人
アナイス(Animal Navigation In Case of Emergency)は、
2003年にNPO法人として活動を開始した
“人と動物”の災害時避難と避難生活を
サポートする団体。
2000年三宅島噴火の後、2001年に
設置された「三宅島噴火災害動物
救援センター」にボランティアとして
参加していた平井潤子さんがセンターで
保護した動物のお世話をしながら
感じたのは、被災動物救護はその
飼い主様の支援につながるということで、
人と動物の防災をサポートする
アナイス設立に至ったと言う。
【画像1】三宅島噴火災害動物救援センターには68頭の犬猫が
収容されていた。その1頭1頭に飼い主との絆にかかわる
物語がある(写真提供/アナイス)
【画像2】アナイス発行の冊子「動物防災の3R—準備と避難と
責任とー」を手に、平井潤子アナイス理事長(写真撮影/藤井繁子)
「各自治体の防災ガイドラインでも、
ペットとの同行避難を推進している
ケースが増えてきました」
(平井さん、以下同)
「ペットが避難所に受け入れられない
ことで、飼い主が危険な場所に残ったり、
ペットとともに車中で過ごした結果、
エコノミークラス症候群等の健康被害に
あったりすることを懸念し、避難所での
ペット受け入れ対策を検討し始めています」
“ペットとの同行避難”が推進されて
いると聞き、安心した筆者だったが……
「ただし、『同行避難』とは飼い主が
ペットとともに安全な場所に避難する
ことを言い、避難所室内でペットと一緒に
過ごせることとは異なります。
避難所にはアレルギーをもつ方や
ペットが苦手な方もいらっしゃいます
ので、避難所内の状況によって
室内同居できるとは限らないのです」
なるほど、避難所の中には入れないんだ
……ウチは犬猫共に室内飼いだけど、
猫をケージに入れっぱなしは可哀想だなぁ。
「一方で、避難所内に共同の飼育
スペースを用意したり、避難者の方々が
オリジナル・ルールを決めて柔軟に
対応する事例も増えてきています」
災害は一つとして同じものはなく、
地域の人間関係や住環境によっても
被害の状況が大きく違い、全てが
初めての非常事態。その避難所で、
人々がどう理解し合って助け合える
かがペット防災のキモのようだ。
また、今年4月に発生した熊本地震の
ように、震度7を超える地震が同じ地域を
2度も襲うような事態のなかでは、
耐震対策さえしておけば万全とは言え
ないが、少しでも被害を減らすために、
その心得を教えていただいた。
「動物防災の3R」、ハードと共に
ソフトの準備を
アナイスが提唱している
「動物防災の3R」とは、
・Ready(備え)
・Refuge(避難生活)
・Responsibility(責任)
「Readyには、ハード(物)の備えと、
ソフト(方法や考え方)の備えが
必要であることを知っていただきたい
です」と、平井さん。
ハード面ではまず、安全が確保できる
自宅の耐震化などを行うこと。
飼い主が無事でなければ同行避難も
できないので、まずは人の安全を
確保することが重要だという。
その上で、
「留守番中の震災に備え、ペットの
安全を確保できるスペースをつくり、
そういったスペースになじませて
おくことも必要」
もし飼い主が外出中に災害が
起こったら、犬や猫が自力で隠れて
くれる場所があるか。家が倒壊しても、
頑丈な家具を配置し、倒れないように
固定しておくことで生存空間
(逃げ込む場所)ができ、助かる
可能性が高まる。
「トイレは柱と壁で囲まれた構造で
比較的頑丈です。ドアを少し開け、
逃げ込めるように固定しておくのも
一案です」
自宅から一緒に避難するケースでは、
「猫や小型犬用キャリーバッグは
必須アイテムです。ただ、
プラスチック製は非常時の混雑で
衝撃を受けて壊れることも多く、
ガムテープで補強して運び出すと
いいでしょう」
【画像3】避難所で怯えている猫は、逃げ出さないよう注意が必要。
大きなタオルなどでキャリーを覆うと視線や音を遮ることができ、
落ち着く場合も(写真提供/アナイス)
【画像4】アナイスが開発にかかわったリュックサック型
ペットキャリー「GRAMP」。リュックを担いで避難し、
避難所では背面から引っぱり出したネットがケージに
なる。4万5000円(税抜)(写真提供/ドリーム)
一緒に逃げられる?飼い主が知っておきたいペットとの避難2へ続く