<猫ブーム>価格高騰、「ペット競売」の危うい盛況 | トピックス

トピックス

身近で起こっている動物に関する事件や情報の発信blogです。

毎日新聞 10/22(土) 9:30配信

ペットショップに行けば可愛い盛りの

子猫や子犬が何匹もいて、お気に入りの

一匹を選べる。ショップが常に多数の

ペットを用意できるからこそ成り立つ

商売だ。背景には、繁殖業者

(ブリーダー)とペットショップを組織的に

つなぐ日本独自の「ペットオークション」

というシステムがある。

どういう仕組みなのか。ジャーナリストの

駅義則さんが報告する。


世はまさに「猫ブーム」


 ◇700匹を次々と「競り」に

 「6万円、6万1000円…。

はい6万5000円」。

 白衣を着た男性2人が、空気穴の

開いたダンボール箱から子犬や子猫を

一匹ずつ取り出し、周囲の机に座る

30人余りのバイヤーによく見えるように

差し出す。頭上のモニターには

「ラグドール、8月14日生まれ」などと、

品種や生年月日、出品者などの情報が

表示される。

 司会者が1000円刻みで値段を

アナウンスするのに合わせ、バイヤーが

手元の「応札」ボタンを押す。

1人に絞られたところで、落札価格が

決まる。競りの時間は1匹あたり1分

程度。見事な流れ作業だ。

 競りは正午からだが、その数時間前から

ブリーダーが子犬や子猫約700匹を

持ち込んで、業者が用意した箱に入れて

並べていた。まず獣医が目や肌、

骨格など健康状態を1匹ずつ検査する。

ブリーダーも立ち会い、医療面で助言も

受ける。検査に合格すれば箱に戻されて

競りに向かう。

 取材した10月5日は約90の

ブリーダーと約30社のショップが参加し、

猫と犬の割合は約3対7だった。

かつては犬がほとんどだったが、

ブームを背景に最近では猫も増えて

きたという。不合格になるのは

毎回5、6匹程度。これ以外に、その日の

状態では高くは売れないとして

ブリーダーが出品を取り消し、いったん

持ち帰る例も目についた。

 ◇全国に22あるオークション業者

 自治体に登録されている

ペットオークション業者は全国で22ある。

取材させてもらったのは、業界では

2番手の「関東ペットパーク」

(埼玉県上里町)だ。

同社の上原勝三社長は北海道から

関西まで14のオークション業者が

加入する一般社団法人「ペットパーク

流通協会」の会長を務める。最大手の

業者は協会に参加していない。

 関東ペットパークのオークションは

毎週水曜日。協会加盟の他業者と

開催曜日をずらし、ショップ側の

仕入れ機会を増やしている。

検査不合格となったりショップで売れ

残ったりした子犬や子猫はいったん

引き取り、提携先の六つの動物愛護

団体が飼い主を探す。病気で廃業した

ブリーダーの犬や猫も、愛護団体や

他のブリーダーに回すなどして

極力救ってきたという。

 ◇「最大の元凶はネット通販」

 ペットオークションに対しては、

動物保護団体からの批判が根強い。

大量生産と大量廃棄を助長して

いるとの主張だ。公益社団法人・

日本動物福祉協会の町屋奈・調査員は

「ペットオークションを廃止するなどして

大量生産に歯止めを掛けない限り、

不幸な環境に置かれる動物は減らせない。

蛇口を締めないと問題は解決しない」と

強調する。

 上原氏は「生き物を競りにかけるのは

誰が見ても良くはないが、批判を受けて

改善も進めてきた。オークションを通じて

ブリーダーと獣医、ショップが情報を

共有し、衛生面などのレベルも上げて

きた」と語る。さらに、オークション業界

全体には不透明さが残ることは

認めながらも「一気に廃止されたら、

大量のペットが捨てられかねない」と

主張する。

 同氏によると、国内全体の

ペット流通のうち、オークション経由の

比率は65%程度。チェーン展開する

大規模ショップが増え、比率が

急上昇してきた。かつてはショップが

ブリーダーから直接調達する形が

主流だったが、現在の比率は5%に

下がっている。

 そして、残る約30%は、ブリーダーが

インターネットを通じて顧客に

直接販売する「ネット直販」。上原氏は

最大の問題はネット通販業者にあると

指摘する。安くて手軽な半面、

「飼育実態をごまかしやすいし、

トラブルを招く悪質なブリーダーも

多い」からだ。

 環境省の統計によると、

昨年4月時点で犬猫を販売するのは

1万6000事業者。このうち、繁殖を

行っているのは約1万2400にのぼる。

自治体に登録しさえすれば、だれでも

ブリーダーになれるのが実情だ。

上原氏自身、「犬に比べて猫は飼育が

簡単。猫バブルともいうべき価格上昇で

安易なブリーダーが増えると、

後が怖い」と危惧するのだ。