毎日新聞 10/20(木) 10:53配信
群馬県渋川市の観光牧場「伊香保グリーン牧場」は
19日、1970年のオープン以来続けている
人気イベント「牛の乳しぼり体験」(有料)を
11月23日で終了すると発表した。
乳搾りに使っていた牛に乳房が腫れる乳房炎が
多発していたことから、「ストレスが一因。苦痛を
考慮すると取りやめた方がいい」と判断した。
牛の体調などで一時中止するケースはあるが、
「牛の立場」に立ってやめるのは
全国的にも珍しい。
子供たちに人気の乳搾り体験。牛へのストレスに配慮し、終了に
=群馬県の伊香保グリーン牧場提供
グリーン牧場は、酪農で飼っていた
約40頭の乳牛の一部を乳搾り体験に
転用していたが、酪農は赤字続きのため
昨年4月に休止。残った4頭で
ローテーションを組んで乳搾り体験を
続けてきた。その後数カ月間で、1頭は
骨折事故、もう1頭は他の牧場に売却され、
現在は2頭で行っている。牧場担当者は
「酪農をしていたころから、乳搾り体験に
使った牛の方が乳房炎にかかりやすい
傾向がみられた。2頭だけで続けるのは
1頭当たりのストレスも大きく、難しい」
と話す。
グリーン牧場での乳搾り体験は
ここ数年、年間約2万人が楽しむ
人気イベント。乳搾り体験のためだけに
飼育頭数を増やすのも経営的に難しく、
同牧場の基本理念「アニマルウエルフェア
(動物福祉)」に照らし、終了に踏み切った。
全国の観光牧場などでは、2010年の
宮崎県での口蹄疫(こうていえき)の
感染拡大問題や牛の体調を考慮する
などの理由で乳搾り体験を一時中止
することはあった。年間約70万人が
訪れるという千葉県富津市の
「マザー牧場」の担当者は「乳搾り体験は、
うちでも人気イベントの一つ。牛の苦痛を
考えて終了するケースはあまり聞いた
ことがない」としている。【吉田勝】