空前の猫ブームといわれるが、環境省に
よると、全国で年間約8万匹の猫が
殺処分されている(平成26年度)。
そうした中、飼い主がいなかったり、
捨てられたりして保護された「保護猫」
を飼おうという動きが注目を集めている。
大阪では、獣医師が中心となり、
保護された子猫をボランティアらが
育て、若い世代に引き渡す活動が
スタート。保護猫の譲渡に力を入れる
「保護猫カフェ」も登場している。
(服部素子)

おざさ動物病院で育てられている2匹の子猫。
「子猫という幸福のバトンを多くの人に引き継いで
ほしい」と院長の小笹孝道さんは話す=大阪市東成区
ウイルスチェック
大阪市東成区にある「おざさ動物病院」。
同病院長で大阪市獣医師会理事の
小笹孝道さん(47)が2匹の生後3カ月の
キジトラの子猫を抱いて目を細めていた。
この2匹は、同獣医師会が実施する
「子猫リレー事業」の対象として
小笹さんが預かっている保護猫だ。
「子猫リレー事業」の仕組みはこうだ。
大阪市動物管理センター(同市住之江区)
が引き取った、飼い主のいない子猫を、
まず生後3カ月まで、同獣医師会の会員の
病院が引き取って飼育する。その間、
ウイルスに感染していないかをチェック
したり、ワクチン接種をしたり医療ケアも
施す。次に、「キトンシッター」と呼ばれる、
原則として60歳以上のボランティアが
育てる。生後6カ月に達すると、再び、
動物病院が引き取り、避妊・去勢手術を
施す。その後、最終飼育者となる、
原則40歳未満の若い世代に引き渡す、
という試みだ。
生きがいづくり
同動物管理センターと同獣医師会の
協働で、来年4月からの本格実施を目指し、
昨年10月から試験的にスタートした。
今年7月末現在で、23の動物病院が
計80匹を引き取り、このうち17匹が
キトンシッターに預けられ、12匹が
引き取られた。
この事業を発案した、同獣医師会の
細井戸大成会長(60)は、
「シニアボランティアに飼育に
関わってもらうことで、自分の死後を
心配してペットと暮らすことを
あきらめている高齢者の生きがい
づくりになれば、という思いで始めた。
地域ネットワークの構築にもつながれば」
と期待を込める。
今年度の目標は、年間で400匹の
飼育リレーだ。これは、大阪市動物管理
センターで1年間に殺処分される子猫の
うち、病気などがなく、しっかりとケアを
すれば育つと思われる数に匹敵するという。
殺処分の減少にもつながる試みとしても期待される。
カフェも登場
カフェで保護猫に触れ合ってもらい、
譲渡にもつなげようという「保護猫カフェ」
も登場している。

保護猫カフェ「ネコリパブリック」の店内。
代表の河瀬麻花さんは「保護猫の存在を知ってほしい」と話す
=大阪市中央区
今年5月、大阪・心斎橋にオープンした
5階建ての通称「ネコビル」。入居する
雑貨店やカフェバーなどすべてが、
保護猫に関連した店という珍しいビルだ。
3階の保護猫カフェ「ネコリパブリック」
では、猫とふれあうことができ、同店の
審査基準を満たせば譲渡も可能。
すでに5匹が引き取られたという。
同ビルを手掛け、東京などでも
「ネコリパブリック」を展開している、
ネコリパブリック代表の河瀬麻花さん
(41)は、東日本大震災で被災した
ペットの支援がきっかけで、
保護猫カフェを始めた。「猫と暮らす
ライフスタイルを提案することで共感を
得られれば、飼い主探しとビジネスを
両立できるのではないかと思った」と
河瀬さん。「猫を飼うなら保護猫と
いう選択肢もあるということを広く
知ってもらえれば」と話している。