
ロックバンド「SEKAI NO OWARI」が
期間限定シングル『Hey Ho』を10月5日に
リリースする。この曲は
「動物殺処分ゼロプロジェクト」の
支援を目的とする作品だ。
SEKAI NO OWARIは動物殺処分ゼロ
プロジェクト「ブレーメン」を立ち上げて
おり、動物の譲渡を支援していく方針だ。
今作の収益は、その支援金となる。
特に10月8~9日に東京国際フォーラムで
行われる「ブレーメン」プロジェクト公演は、
その全収益金が本プロジェクトに
充てられるという。
保健所による殺処分数が減り、譲渡数が
増えている
いま日本では、自治体の保健所が主体と
なって犬猫などの殺処分を行っている。
近年はどこも殺処分数を減らす方針で
動いている。熊本県熊本市をはじめ
「殺処分ゼロ」の目標を達成させた
自治体もいくつかある。先の都知事選で
小池百合子都知事が、
「ペット殺処分ゼロ」を政策方針に
掲げたことも記憶に新しい。
野良犬を見かけない東京都心部と、
群れで暮らす野犬がいるような山林地域と
では、自治体の対応も異なるが、
「殺処分ゼロ」への道は基本的に以下の
2原則である。
●犬猫の引き取りを規制する
●引き取った犬猫は新しい飼い主
への譲渡する
もちろん、保健所にペットを持ち込む
飼い主は後を絶たないのだが、それでも
全国的に殺処分数が減り、譲渡数が
増えている傾向だ。<終生飼養>を掲げる
自治体の取り組みは、成功しつつあるの
だろう。
だが問題は、一般の飼い主ではない。
動物を「使って」生計を立てる業者だ。
<引き取り屋>が商品価値がなくなった
犬を有料で処分
平成24年に動物愛護管理法が改正され、
自治体はブリーダー(繁殖業者)や
ペットショップ(生体小売業者)など
動物取扱業者からの引き取りを拒否
できるようになった。
業者の世界はどこも、その実態は一般の
人たちには見えにくく、長年当たり前に
なっていること、あるいは、新しい
隙間産業が、ごまんとある。犬の
「処分」についてもそうだ。
業者はビジネスであるがゆえに、
お金にならなくなった犬は処分する。
きれいごとは通用しない。これは日本の
ペット業界の通例だ。
処分にかけるコストは少ないほうがいい。
良心的なショップは値段を下げて、
原価割れしてでも<売り切る>努力をする。
ブリーダー然り、商品価値はなくなっても
里子として引き取り手を探すこともある。
一方、悪質な業者は、内々で
「売れ残った」犬を処分する。スタッフの
手で冷凍死させるとか、川へ流すとか、
野山へ遺棄するとか、お金を掛けずに
速やかに処分する方法はさまざまだ。
これは法律違反であり、もちろんこんな
業者はほんの一部だが、皆無ではない。
大半は、処分料を払って業者に
引き取ってもらう。手間ひま掛からず、
販売や繁殖などの本業に専念できる。
以前は保健所へ持ち込めば安価で
済んだが、平成24年以降、保健所の
規制が厳しくなり、今は、もっぱら
引き取り業者、通称<引き取り屋>に
頼るしかない。
商品価値がなく、業界では不要と
される犬の処分を有料で引き受ける
<引き取り屋>は、こうした背景から
近年ニーズが高まった。「殺処分ゼロ」
政策の反動として「引き取り屋」が
横行したといえる。
最低限のコストで「保管」するだけ
問題は「引き取り屋」に引き取られた
犬猫の、その後である。稼ぎにするため
転売されればまだいいだろう。
だが現実は、多くの犬が見殺しに
されている。
動物愛護管理法により、業者は
「終生飼養の確保を図る」ことが
義務づけられ、「引き取り屋」も容易に
処分はできない。だから、最低限の
コストで「殺さない」という飼育だ。
まとまったお金で引き受けた犬たちを、
人里離れた場所で大量にただ「保管」
しているだけの引き取り屋は少なくない。
暑さ寒さの厳しいプレハブ小屋に、
上にも横にもびっしりとケージを並べ、
犬を詰め込んでいる。
散歩は行かず、健康管理もしない。
水と少量のペットフードを配るだけ。
犬たちの末路は、病死や衰弱死だ。
そうなれば、生ゴミとして<合法的に
処分>できる。
そもそも、隙間産業の水もの商売
だから、破綻する引き取り屋ももちろん
いる。「殺さない」だけの飼育すら
立ちゆかなくなり、大量遺棄したのが、
栃木・佐賀・山梨、群馬......と、
一昨年から相次いだ犬の大量遺棄事件だ。
環境省は、今年2月から「動物の
愛護管理のあり方検討会」を開催して、
この問題に取り組んでいる。ただし、
現状回避ではなく、日本のペット産業の
構図にメスを入れる話し合いを
もたなければ、「引き取り屋」に次ぐ、
第二の儲けビジネスが生まれるだけだ。
(文=編集部)