熊本地震の被災地で、
飼い主とはぐれる「迷い犬」が
増加していることを受け、
熊本市動物愛護センターに
収容されていた犬計29匹が、
環境省の通達により、中四国と
近畿地方に移送された。
各自治体で里親捜しが始まり、
一部で里親が決まる一方で、
「被災地の仮住居で飼えない」との
理由による譲渡依頼の相談が
増えており、
関係者は頭を悩ませている。

熊本市動物愛護センターからやってきた
「のりお」=福山市動物愛護センター
「震災の影響で熊本から来ました。
『のりお』です」
「食べることが好きで元気いっぱい。
愛嬌(あいきょう)もあり、尻尾を振って
アピールします。
おすわり、ふせができます」
熊本から
広島県福山市動物愛護センターに
やってきた雄犬「のりお」は、
ホームページに、愛らしい写真と一緒に、
しつけなどの特徴を掲載した。
広島への移送は、
県動物愛護センター(三原市)の雌犬と
合わせた計2匹で、両センターの
ホームページで里親募集を実施。
2匹とも今月18日までに
引き取り手が決まり、
新しい飼い主のもとに渡った。
熊本市動物愛護センターは
震災前まで、約120匹を収容していた。
地震発生後、迷い犬が増加し、
収容頭数を超えてしまうことから、
環境省に相談。移送距離が近い中四国と
近畿地方に、震災前から収容していた犬の
引き取り協力を呼びかけ、
24自治体に計29匹を移送した。
「震災で大変な思いをしているなか、
何かの役に立ちたいと思った」。
広島県動物愛護センターの担当者は
引き取った理由をこう話す。
ただ、各自治体も収容能力などに
限度があり、同センターでも
「次回も引き受けることができるかは
未定」と話す。
震災から1カ月を経て、
被災地の愛護センターを悩ませて
いるのが、新しい住環境でペットを
手放さざるを得ない状況が
起きていること。
「入院するので引き取ってほしい」
「家が被災したので飼えない」
といった声も増えているという。
熊本市は犬の殺処分ゼロを
いち早く実現した自治体とあって、
引き渡し先で殺処分されることを懸念。
引き渡し先のセンターには
里親を捜すよう求めている。
広島県内の犬の殺処分ゼロに
取り組んでいる神石高原町の
NPO法人「ピースウィンズ・ジャパン」
(PWJ)は
「ペットが入れない仮設住宅が問題」と
指摘し、ペット可能な仮設住宅の
設置を行政側に求めている。(児玉佳子)