命を奪われる側から、救う方に-。
徳島県動物愛護管理センター
(神山町)が、一時保護や殺処分のため
収容された犬の中から災害救助犬や
人の心身をケアするセラピードッグを
育てる取り組みを進めている。
自治体としては全国初で、
計100匹の育成を目指す。
「サーチ!」。指示の掛け声とともに
雑種犬「モナカ」が土を蹴って
駆けだした。
同県板野町の野外訓練所。
災害現場の活動を想定した訓練だ。
「ワンワン」。物陰へ隠れた訓練士を
すぐに捜し当て、飼い主の岡本沙南さん(
19)にほえて知らせた。
モナカは1歳ぐらい。昨年6月に
同県阿南市の路上で保護された。
物おじしない性格などの適性を
見いだされ訓練所へ。
岡本さんは当時通っていた動物関係の
専門学校になじめず悩む中、
見学に訪れた訓練所で偶然
モナカと出会った。
「挑戦せずに後悔したくない」。
自宅に引き取ってハンドラー
(指導手)を目指すと決意。
学校を辞め、県の認定試験に向け
訓練を始めた。足場の悪い場所の歩行や、
集中を切らさない訓練などに
一心同体で取り組む。
モナカは今月11日、
県の災害救助犬の候補犬としての
認定を受けた。
センターによると、
訓練や災害現場の厳しさに耐える
適性を持つ犬はもともと少なく、
規律正しい生活や訓練が求められる
ハンドラーの確保も課題。
県は1匹当たり訓練費30万円を
確保し、平成30年度までに救助犬
15匹とセラピードッグ85匹の
育成を目標に据える。
救助犬の認定や災害時の派遣を担う
NPO法人「災害救助犬ネットワーク」
(富山市)の広報担当、
西坂直樹さんは
「保護犬は精神的ダメージを
受けている場合が多く、訓練やケアに
特別の配慮が必要」とした上で、
取り組みに期待を寄せる。
環境省によると、
25年度の犬の殺処分は全国で
約2万8千匹に上る。
センターの石川生代係長は
「ハードルは高いが、保護犬の活躍を
通じて動物愛護への理解が進み、
殺処分の必要ない社会になってほしい」
と話す。

「モナカ」と訓練に励む
岡本沙南さん
=徳島県板野町