阪神・淡路大震災をきっかけに
発足した兵庫県教育委員会の
震災・学校支援チーム
「EARTH(アース)」が、
若手に経験を継ぐ取り組みを始めた。
設立から15年以上たち、
当時からのメンバーは数えるほどに。
県教委は研修会を開いたり、
メンバー用ハンドブックを
改訂したりして、次世代の
「災害に強い先生」を
育てようとしている。(上田勇紀)
「震災当時を知らなくても分かりやすい内容にしよう」
昨年12月初旬。
アースの班長ら5人が集まり、
心得や作業要領を記した
ハンドブックの見直し作業を始めた。
2006年の作成以来、初の改訂となる。
議論になったのは避難所の
ペットの扱い。
ハンドブックでは「室内に入れない」
とだけ書かれている。
芦屋高校主幹教諭の浅堀裕さん
(53)は
「実際はペットに配慮した
ケースがあった。
表現を工夫しなければ
トラブルのもとになる」と指摘した。
浅堀さんは震災当時、
御影高校(神戸市東灘区)に勤務。
約1700人が体育館などに避難した。
泊まり込みで避難所を運営する中、
「ペットも家族」と訴える被災者のため、
部屋を設けた経験から出た言葉だった。
マニュアル通りにいかない非常時を
どう乗り切るか。
新たな手引の表現に、
知恵を絞る。
全体的に写真を多くして
イメージをつかみやすく
することも考えている。
「派遣先で『神戸から来た』と
言うと頼りにされる。
だからこそきちんと引き継がなければ、
今後のアースは成り立たない」と
浅堀さんは話す。
県教委によると、
発足時のメンバーは多くが引退し、
浅堀さんら10人のみ。
159人のうち30代が63人と
最多の4割を占める。
県教委は昨夏、若手向けの本格的な
研修を初めて開いた。
教育企画課は
「あと数年で震災後生まれも入ってくる。
ベテランがいるうちに、引き継ぐ機会を
増やしたい」とする。

インド洋大津波の被災地に入った
アース員(右)
=2005年、スリランカ
(兵庫県教育委員会提供)

アース員向けのハンドブック(手前)
の改訂を進めるメンバー=兵庫県庁