ハチ公の足元に猫、いったい誰が? 「虐待」と批判も | トピックス

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辻健治2015年11月16日05時31分朝日新聞より

東京・渋谷駅前の忠犬ハチ公像の足元に
猫がたびたび現れている。

若者や外国人観光客らは
スマートフォンやデジタルカメラを
向けてぱちり。

当の猫は人慣れした様子で大あくび。

なぜ、そこに?

 若者らでごった返す10月下旬。

外国人観光客らが一斉にハチ公像に
カメラを向けている。

お目当てはガイドブックにも
載っている忠犬の銅像と、
その前脚の間でくつろぐ猫だ。

 兵庫県加東市から訪れ、
待ち合わせ中だった井沢潔さん(76)は
「国際交流にいいかもしれないね」。

ハチ公前広場にある青ガエル
観光案内所の女性係員は同じ猫を
何度も見るという。

 しばらくすると、
黒いTシャツ姿の男性が猫に近づき、
首の後ろに乗せた。

大勢の視線を受けながら
地下鉄駅のほうへ向かう男性を
追いかけ、聞いた。飼い主ですか? 
「はい」

 埼玉県所沢市に住むという男性。

「街の人々の癒やしになってほしい。
ネットに写真を載せてくれたら、
外国人が日本に行ってみたいと
思ってくれるかもしれないし」。

都内の出版社を定年退職し、
67歳という。

 男性の話では、
幼い頃から猫が好きで、今は近所から
引き取った猫も含めて約30匹
飼っている。

この日連れてきたのは5歳の雄。

渋谷には今年6月から月4回ほど
訪れ、約1時間、ハチ公像の足元に
置く。

 猫を街へ連れていくようになったのは
十数年前。

吉祥寺の井の頭公園に何度か通うと、
高齢の女性が猫に近づき、
「これからも続けて」。

聞けば猫たちの存在が心のやすらぎに
なっていたそうだ。

銀座や桜が咲く上野公園、
雷門にも通った。

ネット上では猫を人混みの中に
置くことについて
「かわいそう」
「動物虐待だ」と批判もされる。

 10月30日夜、ハチ公像の足元に
またあの猫がいた。

猫に息を吹きかけようとした
日本人の中年男性を、
外国人女性が制した。

飼い主の男性が近づくと、
女性は「イスラエルから来た」
と笑顔で答えた。

 男性は言う。

「批判は承知しているが、
賛否があっていいのでは。
癒やされる人がいるなら続けたい」。

男性はペット用のバッグに
猫を入れ、地下鉄駅に
降りていった。(辻健治)