千葉県八街市の八街少年院に
入所している少年が、
矯正教育の一環として保護された
捨て犬の訓練に取り組んでいる。

少年院で世話される犬
家庭に譲るまでしつけをし、
交流を通して命の尊さを知り
信頼関係を築くための忍耐力を育む。
法務省によると、
こうしたプログラムは全国で
初めてという。
「シット」(お座り)、
「ダーウン」(伏せ)。
18歳の少年3人が3匹の犬に指示を出す。
2匹はすぐにできたが、
もう1匹は全く言うことを聞かない。
「目線を下ろしてみて」と
講師の一般財団法人
「ヒューマニン財団」(東京)の
インストラクター鋒山(ほこやま)佐恵さん
(31)が声をかけた。
何度か試すうちに、
犬は指示に従うようになった。
この日は、どのような褒め方を
したらいいかを考えた。
「褒められると、
将来の行動にもつながります」
と鋒山さん。
3人は7月6日から10月まで、
週4日の矯正教育プログラムに
取り組む。
世話をするのは自治体の
保護施設などで殺処分される
運命だった捨て犬。
一人1匹ずつの担当となり、
3カ月間を過ごす。
一日の授業は犬の散歩から始まり、
フンの処理やブラッシングをこなす。
週末はボランティアの家庭が預かり、
少年と手紙で交流する機会も持つ。
3カ月後は希望する家庭に犬を譲渡する。
参加する少年の一人は
「自分のことしか考えずに事件を起こし、
周りに迷惑をかけてしまった。
プログラムは自分の至らない所に気づき
、変わろうと思うきっかけになった」
と話す。
八街少年院は、
傷害致死や強盗など犯罪をした
16~20歳の男性約60人が暮らす。
プログラムは昨年7月に導入。
米国の更生施設で犬による
矯正教育の経験がある鋒山さんらの
協力を得て、同少年院が独自に
考案した。
過去6人が参加している。
法務省少年矯正課によると、
全国の少年院では約10年前から、
動物の飼育を通じた生命尊重の
教育が採用されている。
このうち捨て犬をしつけて
家庭に譲る取り組みは全国初という。
米国・オレゴン州の少年刑務所では
1993年に同様のプログラムを始め、
再犯防止につながっているとの
報告もある。
米国の事例を調べ今回の訓練導入に
関わったジャーナリストの
大塚敦子さんは
「犬と信頼関係を築くことで、
責任感や思いやり、忍耐力など
社会人に必要なことを体で感じられる。
丁寧に検証し、普及できれば」と話す。
八街少年院の法務教官、山下嘉一さんは
「参加した少年は命の大切さを深く感じ、
自己肯定感も得ている。
社会参加への動機にもつながり、
責任感や自尊感情の向上にも
役立っている」と話している。
朝日新聞社