<闘犬の本場青森>長期飼育 周囲知らず | トピックス

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身近で起こっている動物に関する事件や情報の発信blogです。

2015年09月01日火曜日河北新報より

青森県で8月、土佐犬が
逃げ出す騒ぎがあった。

被害はなかったが、
地域に緊張が走った。

「危険」「動物虐待」。

今の時代、そんな言葉で語られる
闘犬は戦時中、この地で血脈を
つないだ。

知られざる全国有数の闘犬の
本場青森を歩いた。
(八戸支局・岩崎泰之)

<「鍵開けられた」>
 三沢市の南に隣接する
おいらせ町に、その2匹はいた。

雌の親子で8月17日夕に
犬舎から逃げ、警察官らが探す中、
約4時間後に飼い主の敷地で見つかった。

 「2匹ともおとなしい性格の
土佐犬だけど、普通の人は
びっくりするべ。
地域の人に申し訳なくてなぁ。
自分から町に放送で注意して
もらうよう頼んだんだ」

 飼い主の男性(63)は18日、
フェンスで囲った飼育ケージ掃除の
手を休め、ここから逃げたと説明した。

資材置き場の奥で、外から見えない。

鍵はフェンス出入り口のドアノブと
上部に2カ所。

 男性は「施錠したが、
誰かがいたずらした。
1年前も鍵を開けられた。
毒餌で3匹をいっぺんに
殺されたこともある。
強い犬がいると売れと言われ、
断ると1週間後に死ぬ。
闘犬はそんなのばかりだ」と
恐ろしいことをさらりと話した。

<閉ざされた世界>
 実際、闘犬は閉ざされた
特殊な世界だ。

犬だけでなく人同士のもめ事も多い。

あまり知られていないが、
青森は闘犬の愛好家の数が
全国一とされ、特に三沢市、
六ケ所村などの一帯が盛んだ。

 町では目撃情報があれば
町内放送や緊急メールで注意を
呼び掛ける。

人的被害はないが、本年度は
これで2件目となった。

 万が一事故が起これば大事に至る。

地元の犬の訓練士(62)は
「逃げた犬はパニックを起こしやすい」と
指摘した。

 2匹が逃げた男性方には
計7匹の成犬がいた。

飼育歴は約20年。

多い時は20匹以上いたというが、
近所の人たちは「見たことがない」と
口をそろえた。

 大半の土佐犬は周囲の目を
はばかるように飼われている。

犬を飼うために郊外に
引っ越す人もいる。

 極力外に出さず、散歩は車に
リードを結んで人や車の往来が
少ない時間を選び、犬舎は
いたずらされないよう人目に
付かない場所に設ける-。

事故を回避するための飼い主の常識は
、世間での肩身の狭さを
表しているようにも映る。

<ペットとは違う>
 男性は人間関係などを理由に
もう3年ほど闘犬から
遠ざかっている。

「土佐犬は闘うより、
闘わずにいる方がストレスが
大きい。
うちの雄たちは闘ってないから
かわいそう」。

そろそろ潮時だと考えている。

 逃げた2匹は飼育ケージとは
別のおりに入れられていた。

母犬の名は毛色から「アカ」。

闘犬に出ない雌には立派な
名前はない。

体重は40キロ以上。

鉄格子越しの姿は愛らしいが、
夜道で遭ったら怖がられるのは
間違いない。

 後日再訪すると、親子がいた
ケージは解体されていた。

男性は「近所に迷惑かけたからな
。3匹をよそにやって、
4匹に減らす」
 愛着はあってもペットとは違う。

土佐犬の現実だ。

[土佐犬]江戸時代後期から
明治時代にかけ、四国犬に洋犬を
交配して作られた。

青森県内の登録犬数は600~700匹。

おいらせ町は70~80匹。

実際はもっと多い。

誰でも飼えるが、「特定犬」に
指定して厳重な管理を義務づけている
自治体もある。


逃走したアカ