犬の世話、若者の支えに 土浦のNPO、昨年から活動 心通わせ、ともに成長 /茨城県 | トピックス

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朝日新聞2014年8月3日掲載



犬にエサをあげるキドックス代表の
上山琴美さん=茨城県土浦市


 引きこもりや不登校に悩む若者たちの
自立を、保護された犬のトレーニングを
通して支援するNPOが茨城県土浦市にある。

ドッグトレーナーなどが集まり、
昨年から活動を始めた。

ここで犬たちと心を通わせ、
新たな道を歩き出した若者も出始めた。

「ここは犬と人の学校です」

 土浦市のNPO法人「キドックス」
代表理事の上山琴美さん(28)は
そう語る。

会の名は「KID(子ども)」と
「DOG(犬)」をあわせた造語だ。

動物愛護団体「CAPIN」(土浦市)から
保護犬を受け入れ、自立を目指す若者が
犬1匹を担当。

毎週火曜から金曜、日常の世話のほか、
犬が里親のもとで幸せに暮らせるように
人間の指示が分かるようにする
トレーニングをする。

 参加する若者たちのほとんどは
心が繊細で、捨てられたり
虐待されたりした犬の気持ちを
理解してくれているという。

 だからといって、考えなしに犬の世話を
させればいいわけではない。

「命を預かっているプログラム。

どの犬との組み合わせがよいか、
彼ら若者の課題は何かを、
普段の様子や面談などから考える」
と上山さん。

 学生時代のことだ。

友人が非行に走り、上山さんは教育に
関心を持ち始めた。

そのころ飼い犬が病死。

飼い方も悪かったと知り、
犬のために何かやりたいと思った。

そんなとき、捨て犬の世話が中心の
更生プログラムが米国の少年院で
実践されていることを知った。

「人のため」と「犬のため」が
結びついた。

 上山さんは昨春、米国に渡って
念願の更生プログラムの研修を
受けた。

土浦市の知人の空き家を借りて
活動を始めた。

これまでの参加者は、
現在通っている4人の若者を含め
約20人になった。

トレーニングだけでなく、
里親探しやイベント企画などに
取り組み、復学や就職などを
目指している。

「毎日正解がなくて大変です。

でも、犬と人が成長している姿を
見たときの喜びが大きい」。

参加者とともに上山さんも
充実の日々を送っている。


「周りに関心向ける契機に」



訓練生の男性にブラッシング
してもらう犬
=茨城県土浦市のキドックス


「自分以外の周りに関心を向ける
きっかけになった」と、
昨年9月~今年1月、
キドックスの活動に参加した
県南部の男性(27)。

 働く意味を見いだせず、
21歳で仕事を辞めた。

その後、6年間を自宅で過ごした。

不安の方が大きかったが、
「何か変わるきっかけが欲しい」と
参加を決意した。

 男性はオス犬を担当。

最初は犬に集中できなかった。

気持ちが見透かされていた。

トレーニングや散歩で指示を出しても
従ってくれなかった。

逆に犬のことを真剣に考えると、
犬の動きもよくなった。

 担当した犬には里親がまだ
見つかっていない。

男性は時々キドックスに顔を出す。

犬は目が合うと、すぐに駆け寄ってくる。

「信頼してくれているんだと分かると、
本当にうれしいですね」

 男性は1月末にキドックスを「卒業」。

3~4月、まず工場の短期アルバイトを
した。

毎週月~金曜、朝から夕方まで、
契約期間の仕事をやり遂げた。

「人と関わって、体を動かして、
自分らしい生活を実感したい」。

男性は新たなステージに向かうことを決め、
職探しに精を出している。
(福地慶太郎)