広島の原爆で焼けたキョウチクトウを
題材にした絵本の読書感想コンクールで、
入選した長崎の子ども5人が、
広島原爆の日の8月6日、広島市での
平和記念式典に出席することになった。
同じく原爆の悲劇をくぐり抜けた長崎。
5人は入選作品で、身近な動植物などを
通じて平和や命の大切さを表現している。
コンクールは、広島市在住の弁護士で
墨絵詩人、緒方俊平さんが2000年に
出版した絵本
「夾竹桃(キョウチクトウ)物語」を
題材に、市民団体が実施した。
小中学生対象で、全国からの応募総数は
3249点。
作文部門と絵画部門に応募した長崎の
5人を含む50人が入選し、広島に
招かれた。
キョウチクトウは原爆投下後の
広島でいち早く花を咲かせ、
復興のシンボルとして知られる。
夾竹桃物語は、被爆した犬たちが身を
なげうってキョウチクトウを守る姿を
通して、平和について考えさせる童話だ。
入選した長崎県南島原市の
市立大野木場(こば)小学校6年、
横田幸之助君(12)は、犬を題材に
絵を描いた。
火の海で涙を流す犬の口から、
平和を象徴する絵が吹き出しの形で
出ている構図だ。

青々とした木、大盛りのごはんを
食べる犬、ひなを育てる鳥……。
その周りに希望を表す光が広がり、
火を覆う。
平和学習に取り組む中村浩子教諭(46)
の指導を受けながら仕上げた。

同校にも偶然、
広島のキョウチクトウと同様に、
焼けながら復活した木がある。
1991年に雲仙普賢岳の噴火による
火砕流で焼けたイチョウだ。
横田君は、元気に葉を茂らせる
イチョウを見て励まされる思いが
するという。
「被害を受けても一生懸命生きて、
皆に希望を与えている」
長崎県南島原市立
有家(ありえ)中3年の本村真依
(まい)さん(14)は入選した絵で、
人の涙が集まって核の炎を消していく
様子を描いた。

核廃絶への思いを込めたという。
長崎市の爆心地から約800メートルの
山王神社には、「被爆クスノキ」がある。
被爆して黒こげになりながら
、生きながらえた木だ。
本村さんは7月下旬、クスノキを
見に行った。
原爆では祖父も被爆している。
その体験をつらそうに話す姿が
忘れられない。
祖父は約6年前に亡くなった。
「私たちは被爆者から体験を
聞ける最後の世代。
私たちが伝えていかなければ
いけない」と考えている。
同校3年の松永恵実さん(15)は
作文で入選。
「平和とは、『無駄な命なんて
ないんだと誰もが気づくことだ』と
思いました」と書いた。
ほかに、南島原市立大野木場小6年の
宮田ゆめかさん(11)が作文で
、長崎県大村市立竹松小4年の
原口紗優貴さん(10)は絵画で
入選した。
入選した5人とも、広島に行くのは
初めてだという。
本村さんは「平和記念資料館に行きたい。
原爆の子の像も見たい」。
横田君は「お好み焼きを食べて、
キョウチクトウを見たい」と話した。
(渡辺純子、山下知子)