2015年7月18日 9時1分Livedoornews
女優、タレントとしては言うに及ばず、
近年では実業家としての顔も併せ持つ
杉本彩さんが、数ある自身の
アクティビティの中でも「私の生きる目的」
と明言し、20年以上にも渡って
“動物愛護活動”を続けていることを
知っている人も多いだろう。
昨年2月には、活動をより推し進めるべく
『公益財団法人 動物環境・
福祉協会Eva(エヴァ)』を設立。
自ら理事長の任に身を置き陣頭指揮を
執ることはもちろん、全国津々浦々での
イベント開催や、専門家を招いての講演会、
さらには超党派の動物愛護議連に参加し
意見を戦わせるなど、団体設立から
1年以上が過ぎ、ますます精力的な活動を
展開している。
「めぐろパーシモンホール」
(東京都目黒区)で先月開催された
チャリティー・イベント
『Happyあにまるフェスタinめぐろ』でも、
海外の動物保護施設などに材を採った
ドキュメンタリー映画
「みんな生きている~飼い主のいない猫と
暮らして」(泉悦子監督)の上映後、
朗読会や地域猫トラブル模擬調停にも
参加し、動物愛護を訴える杉本さんの姿が
ひと際目を引いた。
「正直、まだまだ手探りの感もあり
試行錯誤の段階ですが、継続して催すことで、
緩やかにではあるが私と同じ思いを抱きながら
活動されている方々が集い始めているという
実感を強く持っています。
イベントを通じて、自分自身に
不足している知識や今まで気付かなかった
アプローチの方法などを情報交換できる
というメリットも非常に大きい。
加えて、普段あまり動物愛護に馴染みの
ない方、興味はあるがどう手を差し伸べて
よいのかわからず足踏みをしている方
などに対してアピールし、活動に
参加して頂く契機を提供する場として、
今後も地道に続けていきたい」
バラエティ番組で見る朗らかな
イメージとは違い、杉本さんが放つ
真っすぐな言葉には凄みすらあった。
恐らく、これまでの活動で目にしてきた、
直視することも憚られる現実があるから
なのだろう。
昨年2014年時点での国内の犬猫飼育数は
犬1034万頭、猫995万頭
(一般社団法人ペットフード協会調べ)と
2000万頭以上にも及び、過去には例を
見ないほどの隆盛を示しているが、反面、
年々減少傾向にあるとはいえ、
現在でも年間約17万6千頭もの犬猫が
動物保護センターに引き取られ、
うち12万8千頭(2013年時点、環境省統計)
の犬猫が殺処分されている。
このような現状から、動物愛護が盛んな
ドイツやイギリスなどの諸外国からは
“ペット後進国”と揶揄されることも
しばしばだ。
昨年6月には国もやっとその重い腰を上げ、
環境省が「犬猫殺処分ゼロを目指す
行動計画」を発表。
犬猫の広域譲渡や野良猫対策などの
モデル事業を全国12都道県13自治体で
スタートさせ、その対策に乗り出して
いる。
杉本さん自身、この取り組みには
大いに賛同しているようだが、一方で
「譲渡や保護は確かに重要だし
推進すべき活動だが、そのような悲惨な
犬猫の状況を生み出している根っこの部分、
つまり『悪徳繁殖業者』の問題をクリアに
することが急務」と語気を強める。
「命ある動物を“カネになる商品”として
モノ同然に扱い、手当たり次第に繁殖
させては無責任に売り飛ばし、
売れ残ったらゴミとして処分する……。
感情論を抜きにして、それが悪徳ブリーダーの
紛れもない実態です。
現在、全国20か所で年間40万頭もの犬猫が
オークション(犬猫競り市場)経由で
流通し、ブリーダーは産まれた子の30%を
通信販売、繁殖用、欠陥品
(病気などを理由に殺処分される犬猫)に充て、
残り70%を競売に出すと言われています。
要するに、この供給の“蛇口”を
閉めない限り根本的な解決には
繋がらないということ。
また、我々自身もペットショップに
陳列されている仔猫などを眺めて、
ただ『カワイイ~』などと宣い安易に
購入するのではなく、このような
動物たちがどのような形で生産、
流通されているのかということに
もっと想像を巡らす必要がある。
その意味で、売る側に対する罰則強化は
もちろん、買う側の意識変革を促して
いくことも必要不可欠」
現在、2013年9月に施行された
改正動物愛護管理法により
「終生飼養(飼い主が最期まで
飼育する責務)」が義務付けられ、
その責務に反する場合は行政施設での
引き取り拒否が明文化。
また、生後56日を経過しない犬猫の販売
・引き渡し・展示を禁止する
「8週齢規制」が施行されたが、
この8週齢規制にはトリックがあり、
条文では56日と明記されているものの、
「施行後3年間(2016年8月31日まで)は
45日、
それ以降は別に法律で定めるまでの間は
49日」
という条件付き。
つまり、施行後3年経ったら再検討する
という一見体裁のよい文章だが、
実際には規制が機能するかどうかは
わからない”骨抜き”に等しい法制化
だという。
結果、悪徳業者による蛮行は依然、
法の手を逃れていることは明白であり、
すでに欧米の動物愛護先進国で
実施され、動物虐待や飼育放棄を
重犯罪として取り締まる
「アニマルポリス」の設置など、
さらなる法整備が急がれるが、
そこには水面下での大きな“障壁”が
存在すると杉本さんは話す。
「動物愛護管理法の改正は、環境省管轄の
『中央環境審議会・動物愛護部会』という
組織で審議されるのですが、
大学教授や日本獣医師会などの委員に
交じって、動物販売業に深く関わる
団体の人間が少なからずメンバーとして
名を連ねているんです。
敢えて、ここでは詳細な名称は出しませんが、
本来、特定の利害に偏らずに公平、公正で
あるはずの国の組織が、自らの利益を
守りたい人間たちの抵抗に抗えず、
抜本的な改正に踏み切れないでいることは
容易に想像がつく。
部会長以外は臨時委員なわけで、
もっと幅広い人選を行えるはずだし、
行わなければ絶対にダメ。
その意味でも、動物愛護促進の遅延を
招く元凶とも言うべきこの審議会の
実態をより掘り下げて、広く問題提起
していきたいと考えています」
活動の一番の原動力は「動物の命も、
人の命と何ひとつ変わらない尊いもの」
という思いだというが、
「地道な活動と並行する形で、より多くの
方々に情報発信するため、インパクトの
強いイベントも現在企画中」と話すなど、
今後の活動にもさらなる意欲を
見せる杉本さん。
“ペット大国”とまで呼ばれるに至った
現在の日本において、動物環境全般を
取り巻く諸問題に注視し、
改善を促すべく行動を起こすことは、
我々国民ひとりひとりの責務と
言えるのではないだろうか。
<取材・文・撮影/藤原哲平>