東北大医学部で研究用に
飼われている動物と飼育員の交流を
追った児童向けノンフィクション
「ありがとう実験動物たち」
(岩崎書店、1404円)が出版された。
実験後は安楽死処分される動物を
題材にした児童書は極めて珍しい。
著者らは「生命倫理を考えるきっかけに
してほしい」と話す。
東京の児童文学作家太田京子さん
(67)が、東北大医学部の
動物実験施設技術職員の末田輝子さん
(53)を2年がかりで取材し、執筆した。
元施設長で東北大名誉教授の笠井憲雪さん
(67)が監修している。
東北大医学部はマウス2万5000匹
のほか、イヌ、ブタ、サル、ウサギなど
計100匹の動物を飼育している。
「実験動物が苦しむ時間をできる限り
少なくしたい」。
著書ではイヌの床ずれ防止法を
考案したり、実験にかかる時間を
減らすよう研究者を説得したりして
奔走する末田さんの姿が描かれている。
実験用動物を販売する業者の
「病気に苦しむ人々のために医学の進歩は
欠かせない」という声や、
動物愛護の立場から動物実験に反対する
意見も紹介し、主な読者である
子どもたちに命の意味を問うている。
人と動物の関係性をテーマに多くの
本を出版してきた太田さんは
「実験動物への思いやりにあふれる
末田さんに出会ったのが執筆のきっかけ。
真剣に命と向き合う姿を知ってほしい」
と訴える。
末田さんは「実験動物は世の中に
貢献しているのに、関係者さえも
秘密にしたがるのはかわいそう。
この本は実験動物たちが
生きた証しになる」と話した。
連絡先は岩崎書店
03(3812)9131。

実験動物を題材に児童書を出版した
(左から)笠井さんと太田さん、
主人公の末田さん