二度と帰ることのない飼い主を
待ちながら、空き家となった自宅に
1匹ですみ続ける忠犬が
北九州市小倉北区にいる。
週末の日中、里親探しボランティアに
JR小倉駅前へ連れて来られるが、
夕方帰ると全速力で自宅に駆け込み、
大好きだった飼い主を捜す。
周囲は「現代のハチ公」に胸を
痛めながら、優しく育ててくれる
里親を探している。
白の紀州犬ミックスで、
3歳の雄「シロ」。
飼い主の1人暮らしの高齢女性は
今年5月に亡くなった。
遺族が対応に困っているのを知った
ボランティア団体
「アニマルライフプロジェクト」
(福岡県赤村)の沼山喜代香代表
(67)が里親を探すことになった。
シロは基本的に誰にでもなつく性格だが、
飼い主への愛着はひとしお。
沼山さんが車で約1時間かけて赤村の
自宅に連れて行った時は
「24時間ほえ続け、疲れ切った顔になった。
小倉に帰ったら安心してぐっすり眠った」
と言う。
今は遺族やボランティアが交代で
家を訪ね、餌やりなどの世話をしている。
玄関を開けると飼い主が帰ってきたと
思ってしっぽを振りながら飛び出すが、
違ったと分かるとしっぽを下げて
がっかりするという。
飼い主は救急車で搬送されてそのまま
帰らぬ人となったためか
「救急車の音には今でもすごく反応する。
『帰って来るかも』と思うのでしょう」。
とはいえ「しっかりとした
新しい飼い主が見つかれば、
賢い犬だし、なつくはず」と沼山さん。
小倉駅前でたたずむシロの頭を
なでながら「ね、シロ」と声をかけた。
問い合わせは沼山さん
090・1979・6924。
【祝部幹雄】

沼山さんに体をなでられるシロ。
今も飼い主の帰りを待つ
=北九州市小倉北区のJR小倉駅南口で
2015年6月20日午後2時43分
、祝部幹雄撮影