ペットブームを背景に、「犬猫お断り」が
一般的だった神社が変わりつつある。
飼い主と一緒に参拝できたり、
ペットの七五三をお祝いしたり。
神社が重んじる穢(けが)れと
清浄の感覚が変化してきているようだ。
●七五三祝いも
薬にゆかりの神様をまつる
大阪市中央区の少彦名(すくなひこな)
神社。
近辺に多い製薬会社の社員らが訪れるが、
3、4年前からペットを境内に入れることを
認めている。
足跡をプリントしたペット用の
お守りを置き、拝殿の外でおはらいも
受け付ける。
「ペットを連れてきたいとの声に応えた」と
別所賢一禰宜(ねぎ)(40)。
月に1回ほど愛犬と参拝するという
同市住吉区の会社員、石見明央さん(46)は
「一緒に住んでいるのだから、
どうせなら一緒にお参りしたい。
こういう神社はありがたい」。

愛犬を連れて参拝に来た石見明央さん(左)と
少彦名神社の別所賢一禰宜
=大阪市中央区道修町2丁目の少彦名神社
南朝の後醍醐天皇らをまつる奈良県吉野町の
吉水(よしみず)神社は、15年ほど前から
受け入れる。
病気になった犬や猫が手術前におはらいを
受けに来る例が目立つという。
佐藤一彦宮司(71)は
「おはらいを受ければ飼い主もホッとする。
神様に対しては人間も犬も対等だと思う」
と話す。
東京都新宿区の市谷亀岡八幡宮は
ペットの七五三をする。
排泄(はいせつ)を済ませ、飼い主のひざに
載せていれば、拝殿で祈祷(きとう)を
受けられる。
5年前に始めたところ、晴れ着やはかまで
盛装した犬や猫が年々増え、昨年は
150匹以上を数えた。
●今も禁止大勢
とはいえ、ペットの立ち入りを禁じる
神社がまだ大勢だ。
全国約8万社を包括する神社本庁は
「排泄をする動物は境内に入れないのが
一般的」(広報課)。
住吉大社(大阪市住吉区)は
盲導犬を除き、境内でペット連れを
認めていない。
「そもそも犬猫など四本足の動物自体が
不浄とされてきた」と指摘するのは、
国学院大の石井研士教授(宗教社会学)。
神道上の清浄と不浄の区分は明文化
されておらず、時代とともに変化してきた。
かつて出産は穢れとされ、妊婦は神社に
近づけなかったが、そう考える人は
今はまずいない。
「清浄の感覚は、生活のなかで
共有される文化的なもの。
ペットは不浄という常識は
通用しなくなるかもしれない」
(村瀬信也、宮本茂頼)