生きていてくれて感謝 虐待犬引き取った芳賀の手塚さん  | トピックス

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身近で起こっている動物に関する事件や情報の発信blogです。

 2014年5月6日朝日新聞掲載

上三川町で飼い主の男に虐待され、
県に保護された犬のうち、オス1匹を
芳賀町西水沼の手塚ちづるさん(46)
が引き取った。

劣悪な環境で育ち人間を怖がる犬を、
子どものように大切に育てている。



引き取った「なると」とちづるさん

 動物好きなちづるさんは、自宅で
ほかにも3匹の犬を飼い、真岡市内の
動物病院で働く。

事件はちづるさんの周りでも話題に
なっていた。

「子犬はまだいいけど、成犬は幸せには
なれないわよ」。
偶然耳にした言葉が、
頭から離れなかった。


 動物病院には、車にはねられた
野良猫を連れてくる人がいた。

「そういう方を見てきたので、私も
1匹ぐらいは助けてやりたかったんです」
と明かす。


 夫の光明さん(62)に相談し、
犬が保護されている
県動物愛護指導センター(宇都宮市)と
県南ドッグセンター(栃木市)に
何度か足を運んだ。


「どの犬を引き取ればいいいのか」。
決められないちづるさんに代わり、
光明さんが選んだのは、ドッグセンターにいた
「5番」と書かれた犬だった。

職員は「コミュニケーションが苦手で、
エサをあまり食べない」と言った。

「なんで選んだのか夫は言いませんけど、
残ったらかわいそうだと思ったんでしょうね」。


「5番」は「なると」と名づけられ、
今年1月に手塚さん宅にやってきた。

最初は体が震え、カラスの鳴き声ですら
怖がった。

世話をするうち少しずつ警戒心が
解けていった。

「ただいまー」と仕事から帰ると鳴くように
なった。

トイレは、ちづるさんが歌をうたうと
するようにしつけた。

「ひどい環境で育った犬ですからある
程度は覚悟していたんですが、物覚えがよく
ておとなしい。
けなげで、かわいくてしょうがないんです」



 夜は隣で横になり、寝かしつける。
「うちは夫と2人だから、
息子が1人増えたようなものですね」と
ちづるさんは話す。

 今でも知らない人が来ると体が
震え出し、まだ外を散歩することは
できない。

少しずつ慣らしながら、いつかは
一緒に出かけたいという。

「生きていてくれて、うちに来てくれて
ありがとうという気持ちです」
(長谷川陽子)



 <上三川の犬虐待事件> 

上三川町で昨年9月、
トラック運転手の男が、犬8匹をフンの
大量にたまった狭いオリに閉じ込めて
飼育していたとして動物愛護管理法違反の
疑いで逮捕され、罰金10万円の
略式命令を受けた。

県動物愛護指導センターは男の飼っていた
成犬計10匹を保護。
うち1匹が産んだ子犬5匹と
合わせて新しい飼い主を募集した。
成犬7匹はまだ引き取り手が
見つかっていない。