時事通信社時事ドットコム4月17日より
人間の母親と赤ちゃんが見つめ合うとき、
お互いの体内で増えるホルモンが、
犬と飼い主の場合でも同様に
増えることが実験で分かった。
麻布大獣医学部の永沢美保共同研究員や
菊水健史教授らが17日付の
米科学誌サイエンスに発表した。
このホルモン「オキシトシン」は脳から
分泌され、母親の出産や授乳に重要な
役割を果たすほか、男女問わず信頼感の
形成を担う。
最近では自閉症治療への応用を目指す
研究も進んでいる。
犬の祖先のオオカミなどでは、
相手を直視することは一般的に威嚇を
意味するが、人間同士や犬と飼い主の
場合は見つめ合うことで心が通う。
永沢さんは「犬が古くから人間と暮らし、
絆を形成できたのは、オキシトシンが
関与する仕組みを共有できた
からではないか」と話している。
実験はラブラドールレトリバーや
プードルなど30匹(雌雄半々)と飼い主
30人(女性24人、男性6人)で実施。
実験室で一緒に30分間過ごす様子を
観察し、前後に採尿してオキシトシン濃度を
測定した。
最初の5分間に飼い主をよく見つめた
8匹と、その飼い主で濃度が上昇した。
別の30組で犬の鼻にオキシトシン溶液を
スプレーする実験では、雌犬に限って
飼い主をよく見つめ、飼い主の
オキシトシン濃度が上昇した。
国内で飼育されるハイイロオオカミ11匹と
飼い主4人の実験では、オオカミが
ほとんど飼い主の顔を直視せず、
オオカミも飼い主も濃度が上昇しなかった。