2015年4月11日03時00分朝日新聞デジタルより
2011年3月の東日本大震災で、ペットと一緒に避難する住民ら=仙台市
県は9日、大規模災害時にペットが
飼い主と一緒に避難するための行動指針を
策定したと発表した。被災した飼い主や
行政、獣医師、動物の救護活動に従事する
ボランティアなどの関係者に、飼い主と
ペットが同行避難する場合に求められる
対策を求め、避難所が飼い主とペットを
受け入れる態勢をつくるという。
2011年の東日本大震災で被災した
自治体では、多くの飼い主がペットを
置いたまま避難した。ペットの餓死や
野生化がみられたほか、避難所での
ペット飼育をめぐるトラブルなどが問題と
なった。
県衛生課によると、今回の行動指針は
東日本大震災を教訓として、13年に
環境省が示したペットと一緒に避難する
ことを勧める指針に沿って作成した。
被災・負傷した動物の保護や、ペットを
「家族の一員」とする被災者の心のケア、
人の手を離れた動物の安全管理などを
目的としている。
飼い主は大規模災害時にペットと
一緒に避難所に向かい、避難所で他の
被災者と共同生活を送る場合は、
人の居住空間とは別に定められた
ペットスペースで、飼い主自身が
ペットを管理する。
行政や獣医師、ボランティアは
食料配布や医療などの面で飼い主を
支援する。
ペットスペースは、屋外のテントや
屋根のある場所を想定する。
県によると、県内35市町のうち、
ペットの受け入れが可能な避難所の
運営マニュアルがあるのは5市町に
とどまる。
県内で飼い主と一緒に避難する
ペットの数は、南海トラフ地震の
大規模災害発生から1週間後に
イヌ7万匹、ネコ5万匹の合計で
最大12万匹が想定されるという。
今後、県は各市町に避難所での
ペットの受け入れ態勢やマニュアルを
整備するように求める。
■ボランティア育成など急務
県の行動指針では、県動物保護協会や
ボランティア関係者なども、災害時の
連携を期待されている。
県動物保護協会は、飼い主やペットを
対象にした講座に災害対策の項目を加え、
避難の訓練を始めている。
災害が起こる前に、移動用のケージや
キャリーバッグに慣れさせる、身元確認が
できる名札などを身につける、7日分の
えさや水を備蓄する、といった準備を
呼びかけている。
県の第4次被害想定で、県内の避難所は
1千カ所以上に及ぶ。
同協会の斎藤俊夫事務局長(60)は
「飼い主やペットと、他の避難者や
スタッフとの間を取り持つ避難所用
ボランティアの育成が急務だ」という。
投薬や治療が必要なペットも多い。
地域の自主防災組織との連携も
必要だと話す。
斎藤さんは「まずは飼い主が安全で
健康な状態で、自ら当番制などの形で
えさやりやスペースの掃除などをする。
行政やボランティアはそれを支援する」と、
災害時の「共生と共助」を思い描く。