源氏物語イラスト訳【紅葉賀170】我ひとり
我ひとりしも聞き負ふまじけれど、「うとましや、何ごとをかくまでは」と、おぼゆ。
【これまでのあらすじ】
桐壺帝の第二皇子として生まれた光源氏でしたが、源氏姓を賜り、臣下に降ります。亡き母の面影を追い求め、恋に渇望した光源氏は、父帝の妃である藤壺宮と不義密通に及び、懐妊させてしまいます。
光源氏18歳冬。藤壺宮は、光源氏との不義密通の御子を出産しました。源氏は宮中の女官に手を出すこともなかったのですが、年増の源典侍(げんのないしのすけ)には少し興味を持って、ちょっかいを出しています。
源氏物語イラスト訳
我ひとりしも聞き負ふまじけれど、
訳)自分一人が聞いて自分のことと思うはずはないけれど、
「うとましや、
訳)「嫌になるなぁ。
何ごとをかくまでは」と、おぼゆ。
訳)何事をこのようにまで嘆くのだろう」と、思われる。
【古文】
我ひとりしも聞き負ふまじけれど、「うとましや、何ごとをかくまでは」と、おぼゆ。
【訳】
自分一人が聞いて自分のことと思うはずはないけれど、「嫌になるなぁ。何事をこのようにまで嘆くのだろう」と、思われる。
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■【我ひとり】…自分一人
■【し】…強意の副助詞
■【も】…強意の係助詞
■【聞き負ふ】…聞いて自分のことと思う。自分のことと思って聞く
■【まじけれ】…打消当然(推量)の助動詞「まじ」已然形
■【ど】…逆接の接続助詞
■【うとまし】…いやな感じだ。避けたい
■【や】…詠嘆の間投助詞
■【何ごと】…何事
■【を】…対象の格助詞
■【かく】…このように
■【まで】…限度の副助詞
■【は】…取り立ての係助詞
■【と】…引用の格助詞
■【おぼゆ】…思われる(ヤ行下二段動詞)
■【を】…対象の格助詞
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物語や小説を読むと、
いろんなことの「追体験」ができます。
いやいや、ドラマや漫画でも、できるっしょ!
…という声が聞こえてきそうですが…^^;
しかし、映像で見ると、その俳優さんとか、アニメキャラの好き嫌いが、色濃く反映してしまいます。
わたしは韓流ドラマが好きで、よく見ています。
ものすごく入れ込んで、入れる作品もある一方、
あまりにもふがいない展開に、なんかイライラして、途中で見るのをやめてしまったりした作品もあります。
もちろん、本を読む場合にも、けっこうイライラしたり、気持ちが入り込めないことも、多々ありますよ。
でも、そんな時でも、そこを我慢して、淡々と読み進めていけば、
自然と主人公に共感をいだいて、感情移入してしまっている自分を発見します。
今回の源典侍、イラスト訳で、あらぬ方向にイメージ付けてしまった人、ゴメンナサイ;;
ですが、原文をメインに、ちょっと展開を追っていきましょう。
「どうせ私なんか…」と、自分を卑下して、
相手に、「そんなことないよー」と、言ってほしい人って、よくいますよね。
この源典侍も、「私のちっぽけな東屋なんか、誰も訪れてくれる殿方はいないわ」と、あえて光源氏に詠いかけて、気を引こうとしています。
ちなみに、わたしくらいの年齢になると、
「あらあら、そんなことしたら、逆効果でしょ」
とか、経験値でわかることも出てくるんですが、
まだ恋愛未経験の若い人に、ぜひこういう部分のやりとりを読んでほしい。
「どうせ、私なんて…」
そういう言葉を口グセにして、同情の気を引こうとしてしまう人は、いませんかぁ?
YouTubeにもちょっとずつ「イラスト訳」の動画をあげています。
日々の古文速読トレーニングにお役立てください。